現パロ 孫兵視点


数馬と孫兵



答えを待つ



ドシン、と誰かが倒れた音がした。
音の元を探すとやっぱり数馬だった。
数馬の周りには藤内も誰もいなかったのでため息をついて、渋々数馬に近寄る。
「数馬」
顔面から地面にべとりとついた数馬の肩を叩くと、ゆっくり顔だけあげて僕をみた。
「孫兵だぁ…」
「孫兵だぁ…じゃない。何してるんだ、こんな砂利道で…石が痛いだろう。早く立ち上がれ」
手を差し出すと、またゆっくりその手を掴んだ数馬がゆっくり立ち上がる。
体中についた小石が重力に負けてパラパラと落ちた。
膝に残ったいくつかの小石を払うと、はぁ、とため息をつく数馬の前髪にも小石がついていたけれど、別に何も言わなかった。
まぁそのうちとれるだろう。
「ありがとう孫兵。自転車避けようとしたら右足が左足にからまってバランス崩してこけちゃったんだ。」
へら、と笑った数馬に今度はこちらがため息をつく番だった。
彼はあの先輩のあとを継いでとても不運だけれど、あの先輩とは違ってドジでもあるなと僕は前々から思っている。
言わないけれど。

「…気をつけろ」
それだけ言うと、じゃあ、と手をあげた。
不思議そうに首を傾げられる。
「孫兵、急いでいたの?」
「いや」
首を短く振る。
左門ではなく数馬だから、2人だとどうすればいいのかよくわからなかったから取りあえず別れを告げただけなのだ。
心許なくて、首をさする。
あるべきものがなくて目を伏せた。
「そう、じゃあ一緒に行こうよ孫兵。」
「え、あ」
あ、しまった。
すぐに返事をするべきだったと思う。
数馬には左門や作兵衛の強引さも、藤内や三之助の一緒で当然というものがない。
彼は僕に選択肢を与えて、僕が答えを出すまで平然と待つ。
言い出せない僕は、答えをゆっくりひねり出す。
「あ、の」
「うん」
いかない、と言えば当然のように「わかった」と言われるだろう。
でも行くことをどうやって伝えたら良いのだろうか。
行く、でいいのか。
あぁ、数馬が返事を待っている。

「…行く」
「うん、行こう」
へら、とまた同じように笑った数馬が歩きを促した。
それに従いながら、ほっとした自分の顔を隠すように、言わないはずだったものを言う。

「前髪に小石がついたままだぞ」
手を伸ばしてそれをとってやるのはしなかった。
思いつきもしなかった。
彼はえ?と前髪に手を伸ばす。
「あ、本当だ。ありがとう孫兵。」




今度は自然な早さで「あぁ」と返事が出来た。











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ゆっくり関係を作る二人

宮上 101117

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