現パロ 数馬視点




左門は、怪我をしても僕には痛いと言わない。
それは三之助と作兵衛もそうだけど、特に左門は言わない。
問題児三人組の二人には言うのかも知れないけれど僕の前では言わないし、僕が見つけなければ、自分で言いに来もしない。
舐めていれば治ると言い切るのだ。
舐めるってお前、中の折れた骨をどう舐めるつもりだ、と怒りまじりに注意したのはもう何回目だろうか。
今日も、見つけて病気に引っ張って行ったばかり、腕にギプスを巻かれた左門はうっとうしそうに左右に揺らしながら、僕の隣を歩いて、彼の家へ帰っている途中だ。
「良かったね、左門」
言うと、何とか閉まっていた左門の口が大きく開いて、それからこちらをぐりんと向いた。
「何がだ?」
「入院とかしないですんで」
「あぁ、うん!そうだ!」
この間は入院をして、たった3日なのに暇だと喚きちらして看護士さん達にべっこぼこに怒られていた。
「まぁどっちにしろ怪我はしてんだけどね」
「まぁな!」
「みんな心配するだろうね」
「そうかもな!」
「作兵衛に怒られるね」
「そうだな!……そうだな…」
元気よく返していたのが急に下がって、うなだれる左門に思わず笑ってしまう。
作兵衛の拳骨は痛いのだと、左門と三之助は言う。
僕も藤内も受けたことはないので想像でしかないけれど、やっぱり痛そうだと思う。
だってすっごい音がするんだよ、すっごい音が。良く平気だよ、あんな音させといてさ。左門も三之助も。
「あぁー、もうどうしよう、なぁ数馬、このギプスは実はハリボテで、腕はなんともないって作兵衛に言ってくれないか」
「別にいいけど、たぶん失敗するよ」
首をすくめると、左門が口をガパリと開けて、僕をガッカリしたような目で見た。
「それを言うなよ、数馬のケチ」
唇を尖らせて文句を言う左門は、電信柱をわざとらしく避けて、そのまま横目で僕を見た。
「それに、どっちにしろ怒られるんだ、心配させるなーって。」
「僕もそう思う」
頷くと、だよなー、と左門も頷いた。
どんどん近くなる左門の家に、それでも僕らの足は早まりもしないし遅くなりもしなかった。
「まぁ、それが作兵衛だよね」
「そうだな。作兵衛が怒らなかったら三之助が怒るしな」
「三之助も怒るの?」
驚いて目をしばしばさせると、(だって彼は仲間に対して怒ることをあまりしないから)左門が頷いた。
「怒るぞー。作兵衛ほどあからさまじゃないんだが、あいつは目が笑ってないからなー」
はははは、と豪快に笑うから、また驚いた。
なんともない、みたいな言い方をしてるけど、僕だって三之助が怒ったところを見たことはある。あんな冷たい目を左門と作兵衛にもするのかと思うと変な感じだ。
平気なのか?怒り方が違うのかな?
「なんかこう話してたら早く二人に会いたくなってきたなー!」
にこにこにこにこ、そんな効果音が尽きそうなほどにっこり笑う左門にこっちもなんだかおかしくなって笑う。
腕をぶんぶん、問答無用で振り回すから、ギプスが不自然な音を立てた。
なんとかそれをやめさせて、笑う。
「左門はほんとに作兵衛と三之助が好きだね」
それにきょとんとした左門は、不思議そうに首をかしげた。
「数馬のことももちろん好きだぞ?」


「…うん、僕も。」










同じように思う

「あ!もちろん、孫兵も藤内もな!」
「…うん、僕も。」








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左門と数馬
従兄弟みたいな関係の二人。

宮上 101107
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