現パロ 藤内視点


「藤内」
ジャリ、という音と共に現れたのは、僕が呼び出した作兵衛だった。
「作兵衛」
いつも使う公園のベンチから手をあげると、片眉を上げておかしそうに首を傾げた。
そうすると、作兵衛の怖くて大好きな先輩を思い出す。
「どうした。数馬は?」
「今日は一緒じゃない」
そう言うと、ますますおかしそうにして、それでも乱暴に僕のとなりに座ると、
「そうか」
と呟いただけだった。
「今日はどうする」
疑問詞をつけないような発音をする作兵衛に頼りっきりの僕は希望を出した。
「パフェが食べたいんだ」

げんなり顔の作兵衛を引きずって連れてきたファミレスでなんの抵抗もみせずに、パフェを頼んで、乗ってた苺を頬張ると作兵衛がため息をついて「うまいか」と言った。
作兵衛の目の前にはアイスコーヒー。
ミルクもシロップも一つずつ。
普通だ。普通過ぎる。
「おいしいよー」
にっこり笑ってごちそうさまです、と言えば、「うっさんくせー笑顔すんな」と威嚇された。
作兵衛はいつの間にかびっくりするほど男くさくなった。
首も太いし、指も節々がしっかりしてる。
足にも綺麗に筋肉がついていて、僕とは大違いだ。
顔のパーツが昔は似ていて、どっちがどっちだゲームと称して同級生を試したものだったのにもはやもうみんな区別がつくようになってしまった。
(三之助は最初から見分けがつくようだった)
「作兵衛は、甘いもの嫌いだったっけ」
イチゴをとって食べると、ファミレスのパフェの癖に甘くてみずみずしかった。
それに驚いていると、ゴキ、と首を鳴らした作兵衛が面倒そうにした。
「別に…嫌いじゃねえよ。食えるっちゃ食えるからな。苦手なだけだ」
「そうだっけ?」
「あぁ…昔は好きだったかな」
「そうでしょ?」
うんうん、と頷くと手を伸ばしてクリームだけを指につけてなめていた。
切れいに巻かれていたクリームが作兵衛のせいでべちゃりと崩れる。
「…甘っ」
「勝手に食べといてそれ言う?」
あーあー、と苦そうな顔をした目の前の男にため息をついて、でもパフェのおいしさは変わらないからちょっとだけ安心する。
みんな作兵衛みたいにこうやってパフェを食べなくなってしまった。
僕だけが甘いまま、細いまま、成長がみえないまま。

「で、どうしたんだよ。」
「え?」
「今日。」
自分の世界から帰ってくると作兵衛が眉をしかめたままコーヒーを飲んでいた。
僕の食べていたパフェはもう底をつきかけていた。
「うん」
「いや、うん。じゃねえよ」
頷くとおかしそうに笑われて、左門と三之助を思い出した。三人とも、笑い方がそっくりだな。
「…まわりがね、」
「おう」
「僕の周りが、ちょっと、その、いろいろ急に変わっちゃって、それで、うん、」
「…」
「ちょっとね。不安になったので、昔はほら、僕と、作兵衛、一緒だったじゃない。今じゃいろんなものがさ、変わっちゃって」
それから二の句が告げなくなって、もごもご言う。
僕は何が言いたかったんだろう。作兵衛ならなんだってわかる気がしたけど、だからってそんな、意味がわからないことばかり言ったって。
スプーンをくるりと回す、皿に当たってカツンと音がした。
作兵衛が黙って俺を見ている。
いたたまれなくなって、うつむいた。
だって変わってしまったんだ。
月日はたつのに、それでも僕の体つきは変わらない、考え方も、人徳も、欲しいものも手に入らないまま、指は、作兵衛よりひどく細い、そのまま
作兵衛がごほ、と咳き込んだ。
我に返って顔を上げると、あからさまに困った顔。
「あ、あー…ごめんね、変な話だ。」
食べ終わったし、帰ろうか?と愛想笑いしてから立ち上がろうとすると、大げさにびくりと肩を跳ねさせた作兵衛が、お、おい!と声を出した。
目を見張って、作兵衛に顔を向ける。
作兵衛がしっかりと僕に目を向けて(それでも眉は下がっていたけど)さっきまで座っていたファミレスの椅子に向けて指をさした。
「もっぺん座れ」
「さ、作」
「いいから。…いいから座れ、藤内」
あんまりしっかり言い直すので、うん、とすごすごと座りなおしてしまった。
そのまま、作兵衛の言葉を待つ。
目を閉じた作兵衛は、腕を組んでふぅー、と息を吐いた。
「あのさ…」
「う、ぁ、うん」
「俺…上手く言えねぇけどさぁ」
目を閉じたまま口を動かす作兵衛が、ぱちりと目を開いた。
「考えすぎんなよ、藤内。大丈夫だからさ」
「…はぁ」
苦々しげに言う作兵衛に、なんかこれからいいこと言われるのかなと構えた僕は拍子抜けして、あんまり良くわからない声が出た。
やっぱり作兵衛にならわかるなんて、そんなわけなかった。
僕がちゃんと言わないから意味が伝わらなくて、大体において僕自身何が嫌でこんなに切羽詰ってるのかわからないし、これを数馬に言えないって言うのもなんかおかしいし、なにがおかしいのかなにが悪かったのか僕
「おい、藤内」
やっぱりこうやってしゃべってみても僕だけが何も変わらないまま欲しいものも指が細いのも変わらないから何でこんなに切羽詰ってるのか
「藤内って!おい!」
がっしり、頭が急に動かなくなって不自然な力が加わって、何かと思ったら作兵衛の手が僕の頭を掴んで、揺らすようにゆっさゆっさ撫でているのだった。
震える声をゆっくり出す。
「…さく、」
「考えすぎんなっつったろ、藤内。馬鹿だな」
おかしそうな声で、言う作兵衛の目が見れなくて、そのまま大きく撫でられる。
頭がぐらんぐらん揺れて、でもなんだかそれで満足してしまった。
もういいや。なんか、もう。満足した。
頷く。
満足してしまった。多分、このために僕は作兵衛を呼んだのだ。

「うん、作兵衛」







気持ちが軽くなる












-----------
藤内と作兵衛。
よく一緒にご飯を食べに行く二人。


宮上  101107
戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -