団蔵と三治郎









本日は組手をする!ではくじを引いて、二人一組になれ!
山田先生の声が響いて、は組のみんなが庄左ヱ門の持つくじに集まる。
俺も例外にもれず順番を待つと、虎若が、うげぇ、と声を出した。
「どした」
「きり丸と当たった…」
「あー…」
虎若は、どちらかと言えば力業で、こんな組手をするときはすばしっこかったり、頭脳系で攻められると弱いのだ。
それは俺も言えることなので、肩をすくめる。
「ご愁傷様」
「全くね…」
「虎若!」
きり丸が虎若を呼んだので、じゃあなと別れた。
俺が引いたくじは上向き三角白抜きだった。
あ、なんか嫌な予感。
「だんぞーう」
声に振り返ると、彼は笑顔でこちらに同じ形の書いた紙を振っていた。
「三ちゃんだぁ…」
嫌な予感的中。
がっくり肩を落とす。
さよなら俺の今日の組手での勝利…
何てったって、自慢じゃないが俺は組手で三治郎に勝てた試しがない。
「何、団蔵。嫌そうな顔だね」
「三ちゃんだ…」
「僕じゃ役不足かい」
近くまで来た三治郎が肩を落とす俺に投げかけるのでうんざりして言い返すと怪しく笑われた。
ほら、それ!それが!

「だって俺、三ちゃん怖ぇんだもん」


ぱちくり、と音がしそうなほどわかりやすくまばたきした三治郎は、さっきよりあからさまににやりと笑ってみせた。
こえぇよぉぉぉ!!


「武器の使用は一切禁止!己の体のみを使い、よしと言うまで!では、始め!」
山田先生の鋭い声がとんで、は組全員な息が沈められ、構えに入ったジャリ、と言う音が響く。

三ちゃんとの間を図り、ぎぃ、と睨みつける。
三ちゃんが、方頬をにぃと引っ張ったのを合図に飛びかかった。
「っだぁ!」
ひょいとかわした三治郎は、くるりと一回転して俺の後ろに回って、うなじに向けて手刀を振り落とす。
いきなり急所かよ!
踏ん張った足を上げて一歩前に出し、半回転する。
その勢いで、右手を振り回す。三治郎が手刀をそのままにしゃがんでよけて、しゃがんだまま下で足を出した。
避け損ねて、片足がふらつく。
三治郎が逃さないとふらついた足を蹴りとばそうとするので、とっさに体を前に倒して地面に手をつき、倒立。
片足を上げる時に三治郎を蹴り上げるのも忘れずに。
もちろんよけられた。
「ちぇっ」
そのまま前転して間合いをとると、三治郎も後ろに下がった。
「舌打ち?余裕だね」
「三ちゃんこそ」
僕?といってくすくす笑う三ちゃんが、とんっと飛んでかかと落としを喰らわせようとする。
ああ、もう!
その足をがしっと掴んで振り回そうとすると、瞬時に体を曲げた三治郎が俺の掴んだ手首に手刀を入れた。
「いっでぇぇえ!」
手を離すと、低い所でくるっと一回転した三治郎は着地して、はぁ、とため息をついた。
「ほんとやだよ、団蔵ってさ。」
むちゃくちゃするし!放り投げられるかと思った!お前は虎若か!
吐き捨てるように言った三治郎は、それから、気をつけなきゃ、とにっこり笑った。
まだ右手首がジンジンしている。畜生痛い。
はぁ、と肩で息をして顔を上げる。…よっしゃ、行くぞ!
「どっせぇえい!」
回し蹴りを決め込もうとすると、普通によけられた。
振り上げた足をとられて、そのまま流れるように押し出されてあせる。
掴まれなかった足を無理やり上げて腕だけに力を込めて、三次郎の顔を狙う。あたりはしなかったけど、かすったようで、三治郎が焦ったように間を取った。
ここだ、と思い立って押し込める。
しびれる右手に鞭打ってコブシを強く握ってぐっと引く。その間に右足を一緒に引いて左足に力を入れる。
「ぅらっ」
思い切り突き出すときにひゅっと耳元で俺のコブシが風を切る音がした。
目を見開いたままの三次郎にかまわず、攻める。
一瞬、三次郎の顔が歪んだと思うと、踏ん張った足元に嫌な浮遊感。それから、脛に痛み。
あぁ、やべ、俺、浮いてね?
突き出した右手をそのままに目の前には土が。
ドサ、と言う音をどこか別のもののように聞いていた俺の目の前は、地面で埋め尽くされてしまった。




「やめ!そこまで!」

山田先生の鋭い声が響いたと同時に、三ちゃんの甲高い、とっても楽しそうな笑い声が響いた。








だって怖い!















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団蔵と三次郎
三治郎が怖い団蔵が書きたかった。
金吾が怖いのは兵太夫。

宮上 100904
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