図書委員会 怪士丸まさかのメイン















「はい、じゃあこれ、元の位置に戻してきてくれる?怪士丸」
「はい!」
「きり丸はあっちね。久作はこれ。」
にっこり笑った雷蔵が三人に返却済み確認済みの本を順番に渡す。
長次はそれに目を向けながらも、黙々と別の作業をしていた。
「はい。」
「はーい。怪士丸、それ重くないか?俺と交換する?」
きり丸が不安そうにたくさんの本を抱えた怪士丸に言うと、怪士丸は首を振った。
「ういしょ…ううん、大丈夫、やれるよ、ありがとうきり丸」
「ごめんね、確かに多かったかも。無理しないでね、怪士丸」
「はい!」
にっこり笑った怪士丸はぱたぱたとたくさんの本を運んでいった。
それを見送った雷蔵は、大丈夫でしょうか…と、不安そうに長次を見る。
長次が黙ったまま何度か頷いたので、雷蔵は不安なままも、作業に戻ることにした。





きり丸と久作が本を戻し終え、上級生二人の元に帰ってきても怪士丸はまだ戻ってこなかった。
「おかしっすねー、怪士丸帰ってこない」
「もうすぐ帰ってくるだろう」
きり丸と久作が雷蔵の返却点検を手伝いながら話していると、いてもたってもいられなくなった雷蔵が立ち上がった。
「や、やっぱり渡しすぎたかも…棚の高いところは避けたはずなんだけど、もしかしたらまざってたのかなぁ?でも、僕が行ったら逆にやりにくいかなぁ?」
「先輩、気にしすぎですって」
いやいや、と手を振る久作に、ますます困った顔をした雷蔵が「そ、そうかなぁ?」とあせった顔をした。
それに、ははっと笑ったきり丸が代わりにと立ち上がった。
「いいっすよ、じゃあ俺行ってくるっす」
「あ、ありがとう…」
まだ困った顔の雷蔵がおろおろしながらきり丸を見送るとそろそろと座る。







とんとんとん、と怪士丸が片付けに行った棚の方へリズムよく向かうと、バサバサバサ、と本がこすれる音と、「あぁー…」と困った薄い声が聞こえて、きり丸は嫌な予感がした。
「怪士丸ー?やっちゃったか?」
ひょいと身を乗り出すと、怪士丸が困ったように「きり丸…」と声を出した。
落ちた本が重なって散らばっていた真ん中に、怪士丸が泣きそうな顔をして一冊の本を取り上げた。
「きり丸…破れちゃったぁ…」
「うわっちゃー」
きり丸は盛大に顔をしかめて、怪士丸に近づいた。しゃがみこんでよく見ると、とめてあった紐が取れて、本の中身がバラバラになっている。怪士丸が握り締めている紙は、縦に横に千切れていて、繋がりがわからなくなってしまった。
んん、と眉間にしわを寄せたきり丸は「散り散りになったの、この本だけか?」と言う。
怪士丸が頷く。
「うん、でもいろいろ一緒に落ちてきちゃった…」
「あー、うん、そうだな、それ片付けてから一緒に直そう。その本」
「うん、ごめんね」
あからさまに困った顔をして謝った怪士丸に、きり丸は苦笑して「俺にあやまんなよ」と言う。
散らばった本をすっかり片付けた後、「さて」ときり丸がバラバラになってしまった本を見下ろした。
怪士丸はへたり込んで、どうしよう、とおろおろする。
「虫食いを直したことはあっても、順番を並び替えるのはやったことねぇもんなぁ」
「うえぇえ…どうしよう、ねぇ、ごめんねきり丸…先輩達怒るかなぁ…」
「怒んないよ、多分、上の二人はね。あるとすればあの眉のりりしい、一年をつつくのが大好きな」
「能勢久作で悪かったなコノヤロー」
新しい声に、どきぃいっと肩を揺らした二人はそれぞれ嫌な顔をする。
「げぇ、久作先輩」
「せんぱいぃぃ」
「いやそうな顔するな。先輩達が心配なさってたから見に来てやったんだよ。」
そしたら本を破いたぁ?片眉をあげた久作は、ため息をついて本棚にもたれかかった。
「お前らはほんと余計なことしかしないな・・・」
「ごめんなさい・・・」
「うっせっすよ」
「で、どうするんだ?先輩達心配していらっしゃるぞ?特に雷蔵先輩が。」
肩をすくめる久作に、ああーときり丸が歯を見せた。それに怪士丸がおろおろと目を泳がせた。
「心配してそー」
「どうしよう、きり丸」
「…うん。俺たちでやるよ、怪士丸、懐ん中入れとけ。先輩達心配してるから、とりあえず戻ろう、先輩達には黙っとけよ」
「えぇ…うん。」
困った顔をしたまま、それでも怪士丸は強く頷き、それを確認した久作はもう一度ため息を突いて、それから三人で上級生二人の下へ向かう。






「あぁ!怪士丸!きり丸、久作、ありがとう」
バタバタ走ってきた雷蔵はおろおろしている怪士丸よりさらにおろおろしながら三人を受け入れ、あわあわ話し始めた。
後ろには長次が控えており、長次のいつもの無表情からも、心配していたことが垣間見えた。
怪士丸はきゅ、と無意識に破れた本を入れた懐を装束の上から握り締めた。
「ごめんね怪士丸、やっぱりたくさん渡しすぎちゃったよね、何もなかった?無事にできた?」
「は、はい。あの、手伝ってくれて…あの、きり丸と、先輩が」
「そう、そう、よかった。やっぱり渡しすぎちゃったよねぇごめんね、大体こんなものかなぁと適当に分けたら随分量に結構差ができちゃって」
「あ、う、はい」
「きり丸と久作もごめんね、ありがとう。」
「あ、はい」
「うっす」
久作ときり丸の返事に、雷蔵は満足そうに頷いた。
「今日は終わろう、ね、いいですよね、先輩」
雷蔵が長次を振り返り、伺いを立てると長次は短く頷いた。
それから大きい手を伸ばし、とん、とん、とん、と三人の頭に手を置くと、目を緩めたので、図書委員は今日は解散となった。
わらわらと図書室をみんなで出て行く途中、後ろに回ったきり丸と怪士丸は、こそっと耳打ちしあう。
「夕飯食べた後、図書室集合な。俺たちだけでやるぞ」
「うん、わかった」
久作は口を尖らせて聴いていない振りをしたまま、二人の話に耳を傾けた。





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