ぐるぐる作兵衛



俺の思い通りにならないことばかりで全く嫌になる。たとえば、成績とか、なんであんなにがんばって勉強しているのにい組には勝てないし、実技だって俺は三之助みたいに速くも強くもない。性格だって左門みたいに素直になれやしないし、数馬みたいに人の心配ばっかりできるわけでもない。まぁ数馬だって心配ばっかりしているわけでもないだろうが。委員会においたってそうだ。俺にもう少し藤内みたいに丁寧さがあればきれいに用具類を直せたかもしれない。用具と言えば性格だってそうだ。この性格のせいで、わかってるのにまだ食満先輩は怖いし、後輩を素直にかわいがれやしないし、後輩達もまだ一年だからか俺や先輩が直したものをそばから壊していくし(特には組の二人の壊す速度は異様だ)俺は俺で先輩にはかなわないし直せるものはまだまだ少ないし、それなのに先輩は今年でいなくなってしまうし俺はまだ一人でできるわけなんかないのに尾浜先輩がこれればまだましだったのに来てはくれないし、それなのに先輩も後輩もしかたないなんて笑うし。だいたい左門も三之助も全然俺の言うことを聞かないでしまいには迷子紐までぶちきって先走ってしまう始末。年をとって力をつけて俺を引き離す二人に俺が追いつけなくなったらきっともう迷子紐なんか意味を成さなくなるんだ。毒虫に毎度逃げられる孫兵のように、俺から、俺の元から遠く離れて逃げていくんだ、二人も、食満先輩も。そしたら俺はどうなるんだろう、一人になるのかな、意外と一人でもやっていけるかもしれないな、どこいったのかとか今何やってるんだろうとか考えなくてすむし、備品を失くして怒られるのを心配なんかしなくていい。でもきっと世界が真っ暗になるんだ、俺は知ってる。でも俺は忍者になるからあいつらとは離れることになるんだよな、それまでにも忍務や実技で離れ離れになってしまう可能性だって、誰かが死ぬ可能性だってあるんだ。そうだ、俺、知っているだろう、三年の今でも何人か学園を去ってしまったじゃないか。去ってしまった旧友たちは今何をしているんだろう、元気で暮らしてるのかな。どうかな、隣の部屋のやつは腕を一本やってしまっていたじゃないか。五年生になったら人を殺める実技だって増えるって聞いたし俺だっていつかそうなるんだろう、俺は忍者になるんだから、そうだ、そうだな。あの曲者だって八宝斎だって忍者なんだ。六年生の先輩だって忍者になるんだ。そういえば先輩と風呂に入ったときにみた体には無数の傷がついていたよな。このぷにぷにした体もいつか引き締まってあんなふうに傷だらけになるんだろうか。なんでついた傷だろう。俺の手のひらも割りと傷だらけだけど、ほとんどは委員会でついた傷だから、切られたりしたことはない。血が出るんだろうな、ピリッとした痛みとともに、自分の血が舞うのが見えるんだ、きっと。それで目の前がだんだん暗くなって、それで意識がだんだん薄れていって、ああ、俺ここで終わりかなって思うんだろうか。思う時間なんかあるかな、俺は一人だとか体中痛いとか、結局俺はなんだったんだろうとか、あれ、本当に俺って何だっけ、たしか





「作兵衛ー、お待たせ、風呂行こうぜー」
「作兵衛ー!待たせたな!孫兵に連れてきてもらったんだ、風呂行こう!」



考えること


まぁいっか




















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左門と三之助がいたらそれでもうどうでもいい作兵衛


宮上  100529

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