現パロ、留文





「それ」
「あ?」
文次郎が指を指したのは俺の顔だった。
なんだと思ったら小さく、それだよ、ピアス。と言われた。
「ああ…これか。何だ?」
「…いやいっつも同じもんつけてるから」
「あー…ひとつしか持ってねんだよな…もらいもんだし」
耳たぶをピンピンと弾いて、缶コーヒーをすする。
文次郎はココアを持っていた。甘いもの好きなのかよ。
文次郎はふぅん、と息だけで答えて少しイスを引いた。
教室には俺たちしかいなくて放課後、俺の腰掛けた机は文次郎の席。
「…なんで片方だけなんだよ」
まだ話は続いていたらしく、隈のある目で少し恨めしそうにこちらを見ている。
何だその顔。
「ん?かっこ良くねぇ?片方って」
「…バカじゃねぇの」
ちっ、と舌打ちした文次郎にバカじゃねぇよと返して次は俺が質問することにした。
見下ろすとやつの顔が夕日に当たってあかい。

「なんだ?急に。」
「…別に。………昔はしてなかったし…」
ムスッとしたまま答える文次郎に、昔っていつのだよ、大体あの時代はそんなもん無かっただろと笑ったら、まぁそうだが、とまだムスッとしたまま答えられた。
「おい、マジお前どうしたんだ?あ、もしかして、お前もつけたいのか?羨ましいのか?」
ピアス。
と文次郎の耳をつついて言うと、驚いた顔をした後叫ばれた。
「…っんでそうなるんだ!!」
パシリと手を払われたけど、その反応が面白くてつつく。
文次郎にピアス。…似合わねーな。
「ははっ、何だよ、そうか…あ、確かあったぜピアッサー」
「いらん!」
「まぁまぁ…」
足元の鞄をゴソゴソやってピアッサーを探す。
一回使ったきり使ってないし、大丈夫だろう。
「たらららったら〜ん!けまピアッサ〜」
「やめろ!」
青いロボットの真似をして出すと、ますます嫌そうな顔をして俺から身を引いた。
でもそんな嫌がられたら、逆に燃えるというのが男ってもんで、というか文次郎に穴をあけるのが俺、というのにやたらと興奮して俺は食い下がる。
「まぁま、やってみろよ。な?やってみるだけ」
「いやだ」
「だーい丈夫だって、ほら、痛くない」
「やらん!そんなもん片手ににじり寄ってくるんじゃない!」
「何が嫌なんだよ、ほら、あけたらお前のピアス一緒に買いに行こう」
「…………いっ、行かん!」
「ははっ悩んでんじゃねぇよ」
何て可愛いところで詰まる奴だ。もうコレは俺があけるしかない。あけて恥ずかしいのを忍んでお揃いのピアスするしかない。なんだそりゃ、面白い絵面だな。
「ほら、やってみろって。一瞬だよ、カシッてやって終わり。な?」
「いやだ!やめ…掴むな!」
ガッシリと文次郎の肩を掴んで、イスに座る文次郎に覆い被さった。
もう意地でもあけてやる。
「痛くない痛くない、俺器用だろ?」
「うるせえ!やめ…大体っ!!校則違反だろうが!」
「…ははは!!そうだな校則違反かも」
「!!ならっ…」
面白い事を言うので、思わず笑ったけれど、コレ以上言い合うのも不毛なので、何か言われる前に肩を掴んだ手をすっと後頭部にまわしてキスをしてやる。
「んぅ!!」

カッシャン

驚いた文次郎を良いことに、唇をつけたままあけてしまう。
目を見開いたままの男がなんだか可笑しくて、そっと唇をはなした。

「これは見逃してくれよ、生徒会長サン」

耳もとで言って、体を離すと、真っ赤な文次郎がバコンと俺を殴り飛ばした。
「ばっ…バカたれ…!!」
「いってぇ…でも痛く無かったろ?」
「そ!!…ういう問題じゃない!」
真っ赤のまま、唇を抑える文次郎に、ニヤリと笑って透ピを渡す。
それを大人しく受け取った文次郎の顔はまだ赤い。
夕日じゃないのもはっきりわかる。
「おら、着けとけよ」
「…んだコレは」
「そのままだとせっかく開けた穴が塞がるだろ?」
「…」
「なんだ?つけてやろうか?」
「いっいらんわバカたれ!!」
むいむい透ピを着けようとする文次郎に、嬉しくなって、明日みんな見たらどんな反応するだろうなぁと笑って、早く一緒のピアスを買わなきゃなぁと思った。


それからなんだかんだで忙しくて一緒にピアスを買いにいけくなってしまったし、あいつもマメなやつじゃないから、文次郎の耳の穴はあっという間に閉じてしまった。




ピアス



















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留の片耳ピアスに萌えたので…
文次郎は生徒会長でも風紀委員でも生徒会会計でもいい。


宮上 100414



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