相互記念 次富 作兵衛視点









三之助と、そういう、恋仲…になったのは少し前の事だ。
俺は恥ずかしさにかまかけてみんなにそういう事になったのを言わなかった。と言うか、隠したかった。
三之助もまぁ納得してくれて、でもそうなると2人でいるのは自然と限られてくる。
例えば、まだ治らない三之助の迷子を迎えに行ったときとか、演習の2人1組の時とか(まぁこれは左門と組むときもあるのですごく限られる)、例えば今みたいに、左門が委員会に行ってしまった俺達の長屋、とか。

「さ、左門、遅せぇなぁ」
「会計は仕方ないもんな」
震える俺の声に興味なさそうに返した三之助は、ごろりと寝っ転がって、こちらをみた。
肩がビクリと跳ねた。
三之助の不機嫌な声が響く。
「なんでそんなぎこちないの」
「なっ…!!」
だって仕方ないではないか。
恋仲になったのはついこの間である。
2人きりになるのは随分久しぶりでそれまでと接し方をかえなければいけないのか、かえるとしたらどうなのか。
というかそもそもこいつにどう接していたかも思い出せない。
しかし緊張はするのだ、俺だって恋仲がどういうものかを知らないような歳ではないのだ。
だがどうするべきか。もう声もでやしない。
うだうだ考えていたせいで、三之助がすぐ後ろまで来ていたのに気がつかなかった。
ぎし、と乗っかかられて、俺は声にならない声をだす。
「ひぃいいあああ!!」
「…化けもんじゃないんだから」
そんなに驚くなよ。と不機嫌そうに言いながら三之助がどいたので、俺はなんとかして息を整える。
「聞いてた、俺の話」
「えっ!な、にを」
ひぃひぃ言うと、ぶすっと唇を突き出した。
「聞いてないじゃん…なんでそんなぎこちないのかって話」
「あ、あぁ…」
目をそらすとますます嫌そうな顔をされた。
むしろ、なぜそんなにお前はいつもとかわらないのかと聞きたかった。
「別に…」
「何、別にって…まぁ意識してくれんのは嬉しいけどさ」
「いしっ…してねぇし!!」
さらっと言ってのけた三之助に噛みつくと、ニヤリと笑われた。
左門はまだ委員会から帰ってこない。
「してるね。さっきから作おかしいもん。」
「おかしくねえ!」
「ははっ」
声をだして笑った三之助はますます余裕がなくなった俺に、また前からしなだれかかってきた。
あんまりに密着するので、俺の心臓の音が聞こえそうで怖い。
何だこれ、体が熱い。顔が熱い。
「なぁ作」
「な、なんだ」
「作、どくどく言ってる」
「いいいいい言ってねえ」
「ふふ、言ってるよ」
こつんと額を俺の額にぶつけて、手で顔を動かせないようにする。
顔が近い。どくんどくんと音が、俺の耳まで埋め尽くされて、体中が早鐘のように打つ。
「俺も言ってるだろ?」
聞こえない?
笑う三之助の息づかいまで感じるほどで、おかしい、俺、今までこんなこと三之助にも左門にも思わなかったのに。俺どうなるんだ。
頭が回らない、どくんどくんと言う音はこれもう俺の音なのか三之助の音なのかなにがなんだか、ていうか、
「お…おい、なんか俺…押し倒されてね?」
「うん。押し倒されてるね。」
俺に圧しかかりながら頷いた三之助の腕の力になんとか対抗しようとするも、体育委員の腕力に勝てないのが悔しい。毎日毎日走ってるだけじゃねえのか。
なんて、何をされてるのかよくわからない混乱した頭はわけのわからないことを考える。
視界に完全に天井が入ったときに我に返った俺は、その時装束を剥かれかけていた。
「何してんだー!!」
「まぁまぁまぁ」
「まぁまぁまぁじゃねぇよ!ちょっ…え、おま、力つよ…」
どんどん押し倒されて異様に力が強い三之助にあせる。
部屋に俺の声が響いて、二人きりだったことを思い出した。
ぐい、と顔を近づけられる。
あ、近い、と思った瞬間だった。
「ふ、んぅ!」
唇をつけられて、離れ際に下唇をなめられた。
な、なななななにすんだなにすんだなにすんだこいつ!!
にっこり笑った三之助はその勢いのまま俺を追い込んでいく。
「ななななななな、なに…!!」
「まぁまぁまぁ」
本当は何されるかぐらい知っているし、いつかはそうだろうなぁ位は思っていたが、思っているのと実際に起こるのとはどうも違うらしい。
「ちょっ…まてって!」
「やだよ、次にいつこんなんできるかわかんないじゃん」
しらっと言い切った三之助に、俺は現金にも確かにそうだなぁと思ってしまい、一瞬止まる。
それにこれ幸いと三之助がおし進めてきた。
「ぅおい!」
「まぁまぁまぁ」
必死になりすぎて、廊下にも周りにも俺たちは気を配らなかった。


バスーン
「作兵衛ー!!三之助ー!!やっと帰って来たぞー!!もう委員会なんてくそくら…え…」
「「・・・」」
「・・・」
あけて入ってきたのは左門で、左門が帰って来るのをすっかり忘れていた俺たちは、呆然と左門を見上げるしかできず、なんにも知らない、知らされてない左門は口をあけたまま固まった。
その気まずすぎる空間を打ち破ったのはやっぱりというか、三之助だった。
「えーと…お帰り、左門」
体勢はそのままで返した三之助に、乱れた装束を直さずに俺も乗る。
「…お、お帰り…」
「ああ…」
どこかぼんやりとしたまま答えた左門は、そのままふるふると振るえ、うきゃー!!と奇声を上げながら俺たちに飛びついてきた。
「そんな楽しそうなこと私もまぜろー!!」
「「やめろー!!」」
そう二人で叫んだが間に合わず、いやに硬い左門の頭が右腕に当たった俺がもんどりうった足が三之助にあたり、倒れた三之助が左門の腕を下敷きにして、左門が痛いと叫んだりして結局いつものように長屋でぎゃあぎゃあと騒ぐことになってしまった。








恋人の距離













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次富と左門
相互記念に、らいら様へささげます。
…なんか…どう謝ったら良いのか…多分ご期待に添えてないですよね…すみません!!
次富か3ろで悩んで、一緒に出せば良いじゃない!となった結果でした…!!
返品大歓迎です!ぜひ何なりとお申し付けください…!!
相互ありがとうございます!^^


宮上  100516

あと実は上級生のつもりで書いたんですけど具体的に何年生にするべきかよくわからなかったのでごまかしました…ははは…

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