続き



「おばちゃん、A定食一つ」
「はいよ」
おいしそうな食事を持ってあいている席を探すと、「さくべーぇ」と藤内の声が聞こえた。
やっぱり左門はきていなかった。
みると、藤内と数馬が手を振っている。
「おー、とーない、数馬」
近寄るとイスを一つ引かれたので、ありがと、と言う。
「作ちゃん、あの二人は?」
委員会?と数馬が聞いて、作兵衛は首を振った。
「しらね。あんなやつら」
「なに?また喧嘩?」
「またってなんだよ」
そんな子供の喧嘩みたいな言い方すんなよ、とぶっすりと藤内に文句を言った作兵衛に、藤内がため息をつく。
「子供の喧嘩じゃないか…今日は何が理由」
「…俺は悪くない」
「それは作が決めていいものなの?」
「…」
あきれたような声をだす藤内をじろりと見た作兵衛は、ため息をついた。
数馬が味噌汁をすする音がする。
「……筆記試験のカンニングの作戦がしくじって、ばれて、担任に拳骨を落とされた。」
「…」
「…」
「…なんだよその目は」
言っておくが俺の作戦は完璧だったんだからな!問題はあいつらなんだからな!と言い訳がましく言う作兵衛に、藤内が盛大なため息をついて、数馬は首を振った。
「…それでなに。三人で責任を押し付けあって喧嘩したんだ」
「…あきれた。カンニングなんてお前たち以外で聞いたことがないよ」
よくやるよ。と数馬がなじると、作兵衛は俺だってなぁと箸をとめる。
「俺だってなぁ、普段はやらねぇよ、けど…それに三之助が七松先輩もやってたっていうから」
「…やりかねなくていやだよ…」
あぁあぁ、と眉を下げた藤内に、眉間を寄せた作兵衛が、それで、と話を続ける。
「それで、左門が…俺の作戦が悪かったって言い出して、でもあいつらがまさかあんなあからさまに人のを覗き込むなんて、普通もっと隠してやるだろ!?なぁ!?」
「作兵衛、普通の人はそんなことしないよ」
「何はともあれそれは三人が悪いよ。結局、みんなまじめに勉強しなかったからだろう」
「そら、時間があればそうしたけどよぉ…次の日だって言われて…」
「それで三人で最後の悪あがきで勉強もせずに作戦練ってたんなら手もつけらんないよ…馬鹿馬鹿しいなぁ」
藤内が手を合わせてごちそうさま、と言う。
ずいぶんひどい事を言うやつだなと作兵衛は思ったが、藤内の入っている委員会を思い出すとなんとなくこれがこの先もっと悪化してしまうんではないかと思われて、身震いをした。
「とりあえず作ちゃん、今日中には仲直りしなよね。明日、ろ組演習でしょう。あの二人以外組む気がしないんなら」
ね、と笑った数馬もごちそうさま、と手を合わせた。
それに、応、と返事をして、作兵衛も急いでご飯をかっ込む。

「それじゃあお先」
と手を振った二人は、食堂のおばちゃんに「ごちそうさまでした」と言って食堂を出て行こうとするが、そのときにわーと走りこんできた一年は組のよい子達に数馬が巻き込まれてすっころび、あきれた声をだした藤内がそれを引っ張りあげていた。
数馬の困った声のありがとう、に藤内も困った声で気をつけなよ、ほんとうに、と言い、二人は食堂を出て行った。
作兵衛はそれをぼんやり眺める。

「仲直りねぇ…」

食器の中身はすでに空になっていた。















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