雪合戦

寒い寒い日の朝。
まだ作兵衛も三之助も寝ている時間。
目を覚ました左門は、とてつもない嬉しさが込み上げた。
良い予感がするのだ。
掛け蒲団をかぶったままズリズリ襖へ向かう。
床が冷たくて吐いた息は白かった。
そおっと少しだけ引いて、覗き込む。
予想通り、目の前に広がったのは一面の白。
途端に息を飲んだ左門は、そらみたことかと蒲団をはねのけ、少しだったのをバスーンと全開にして、立ち上がった。
「雪だ!!」
襖を全開にしたものだから、冷たい風が押し寄せて寝間着しか着ていない左門を冷やしたが、興奮した左門は関係ないとばかりに大声をだした。
「作兵衛!三之助!雪だ!!雪だぞ!!」
しかし、蒲団から出ようとしない二人は、むぐむぐと左門を非難する。
「うるせぇぞ左門…昨日演習だったから今日は昼からだろうが」
「だが作兵衛…」
「そうだぞ左門…雪なんて去年も一昨年もみただろ…しめろ寒い」
「三之助…」
二人はそう言ったかとすごすごと布団の下へ下へと潜り、頭のてっぺんしか見えなくなった。
つまらない。
ああ言いいながら、去年も一昨年も一緒に雪合戦をしたのだ。きっと今回もするに決まっている。
そうでなければつまらない。
むぅ、と唸った左門は、諦め悪く二人の名を呼んだ。
「作兵衛ぇ!三之助ぇ!雪だぞ!」
「…知ってるよ」
「…左門寒い、閉めて」
それでも返ってきたのは、蒲団に潰れた面倒そうな声。
むぅぅうう!と強く唸った左門はいそいそと足袋をはいて、寝間着のまま縁側を飛び出した。
そうして、帰ってきた左門は、まだ蒲団から出ない2人を呼ぶ。
「作兵衛!三之助!」
ドシャア
と二人の頭に抱えた雪を落とした。
「つ…めてぇえ!」
「なっ何!何?」
ガバッと勢い良く起きた2人を指差して笑い、雪だぞ!と言い切った。
「てめぇ!左門コラァ!」
「や…やったな…!!」
三之助は我慢ならんと蒲団から出ていそいそと足袋を履く。
まだ蒲団を離さない、いきり立って怒る作兵衛に、ひゃははと笑った左門は、縁側をもう一度飛び出して雪玉を部屋に向かって投げつけた。
「ぶべぇ!」
雪玉は見事に作兵衛にヒットしそのまま作兵衛はバタリと倒れた。
それと入れ違いのように、三之助が左門と同じく寝間着のまま縁側を飛び出した。
「喰らえ!!三之助マックスドリーム!」
「ぶべら!」
三之助の投げた雪玉が左門の顔に当たり、三之助は誇らしげにニヤリと笑う。
「はっはっは!仲間の死を無駄にしない男だ俺は!」
「誰が死んだってぇ〜!」
ぬも、と出てきた作兵衛の手には、先ほど左門が投げつけた雪をかき集めて作った雪玉がある。
「喰らいやがれ!用具の力を思い知れ雪玉スペシャルゥゥ!」
「でふてっく!」
綺麗に三之助の顔に当たった雪玉は、それでも形を崩さず、コロリと転がった。
「いでぇえ!」
顔面を抑えたままもんどり打っている三之助を縁側から見下ろした作兵衛は腰に手をあけてぐはっはっは!と大声で笑った。
「そうだろうともそうだろうとも!親の仇かと言うぐらい力を入れて丸めたからな!!」
「…な…何が作兵衛をそこまでさせた…!!」
おののく左門を尻目に、復活した三之助が雪玉を投げ返す。
「喰らえぇ!体育委員会魂の弾丸!」
「ギャー!!」
叫んだ作兵衛が間一髪で縁側を飛び降りる。
雪玉は作兵衛の立っていた位置に当たり、縁側がバキィと嫌な音を立てた。
「死ぬわ!」
「体育委員会の玉に対しての執着は誰にも負けない!」
「執着って!!」
「おい2人とも!油断しているバヤイでは無いぞぉ」
うわっはっはっはっは!!
と大口を開けて笑う左門は、さっきまで投げ合っていた雪玉の倍以上の大きさの雪玉を片方ずつ抱えあげて、作兵衛と三之助に投げつけた。
「油断大敵火がボーボー、だ!そりゃあ!」
「どわぁぁああ!」
「どひぃぃいい!!」
バシャ!と背中や肩にかかって思わず作兵衛がどなる。
三之助もかかった雪を払いながら大笑いした。
「腕力にモノ言わせて無理やりなモン投げんじゃねぇええ!」
「まさかこんな所でギンギンそろばんが役立つとは…」
「多い!量が多い!」
「ははははは!冷たいなぁ雪〜」
「おぉら、しっかり逃げろよぉ!」
「ギャァアアア!作兵衛の親の仇玉が来るぞ〜!」
「負けてられるか!唸れ!!体育委員会の弾丸!」
「ギャァアアア!それ死人でるからやめろ!」
3人でワイワイ叫びながら騒いでいると、昼の鐘がなって、その音に驚いた3人で雪に滑ってすっころび、笑い合ってお開きとなった。


次の日。
午前中ずっと寝間着と足袋だけのまま雪合戦をしていたせいで、3人とも仲良く風邪をひいてしまったのだった。















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オチ…オチが見つからなかったんです…
でも凄く楽しかったです。←


宮上 100422

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