現パロ くっついてない 大学生






小競り合い

ポンと肩を叩かれたので振り返ると食満がいた。
「よ」
軽く手をあげるので、俺も上げ返して、耳につけていたイヤホンをとる。
ドラムの音が響いてシャカシャカ鳴っていた。
「よお」
「1限から?」
「あぁ」
「そ、俺も」
そう言って俺の隣に並んだ食満は、1限はしんどいよなぁ〜と欠伸をして背負ったリュックを揺らした。
駅から学校までの道は歩いて10分ぐらいで、俺達と同じように眠そうな学生が、欠伸をかみ殺したり生気を吸い取られたような顔で歩いていた。
俺は肩に掛けていた鞄を持ち直し、食満と一緒に歩き出した。
「何聴いてたんだ?」
「……じゃあ洋楽」
「…じゃあって何だよ」
嫌な顔をした食満がまぁいいよと言って前を向いた。
別に言っても良かったのだが、昔からこの男の前では素直にものを言えず、どうしても言い合いになってしまうことが多かった。
最近こそ殴り合いは減ったとは言え、やっぱり俺は全部が全部素直になれる訳じゃなかった。それでも会話が続くようになった。
変わったのは食満が先だったが。
「1限なんてなーんも良いことねぇのにな。先生も眠そうだし」
あまりに豪快に欠伸をするので、俺もつられてしまう。
「…くぁ…そうだな」
この間なんて30分も遅刻した先生がいた。
いっそ休講にして、補講入れろと思ったもんだ。
「あーあ…1限なんだったかな…お前は?」
「ドイツ語」
「…」
食満が口を抑えて立ち止まった。
俯いて、よくみると震えている。
俺もつられて立ち止まる。
「…何がおかしい」
「いや…いやだって…ぐくっ…」
イラッときたのでケツを蹴り上げた。
「いってぇ」と言うのにまだ笑ってやがるので、もう一度蹴り上げて、食満を置いて歩きだした。もう知らん。
したら食満が追いかけてきて、出来るだけ普通の声を出そうとしていた。
声が震えてる。
「いやいや、怒んなよ。ちょっとお前が…お前が…ドイツ語…っ…に、似合うんだか似合わないんだか…っ!!はははは!」
「我慢はどうした我慢は!」
諦めて、腹を抱えて笑い出した食満をもう一度蹴り上げた。
なんだコイツは!腹の立つやつだ。仙蔵と同じ事で爆笑しよって。
そんな事も知らずに、食満はケツが痛いと言いながら笑う。
「お前が他言語勉強してるとか…っそっ…想像できん…!!」
どうせお前カタコト何だろう、カタカナ発音何だろう、とひぃひぃ言いながら笑うので、痛い所をつかれた俺はぐぅ、と詰まってしまう。
確かに先生にいつも発音を直されるからだ。
「おい!!お前は1限何なんだ」
「ははっ…あー…あ?俺?」
「そうだ」
指を指すので頷くと、涙を拭った食満がキョトンとした。
泣くまで笑うんじゃねぇ、畜生。
「俺は中国語」
「………ぶふーっ!!」
「…」
「……ごほっごほっ…」
「…」
「…そうか」
「……そうか、じゃねぇぇえ!!」
食満がいきり立って怒るので、せっかく咳をしてごまかした笑いがまた戻ってきそうだ。
「なにお前!!笑っといて、笑ってませんよ、みたいな顔しやがって!!俺が中国語喋って何がおかしい!」
「何って………ふ」
怒る食満の端正な顔を眺めて、笑いが込み上げてくる。
あ、ダメだ。
「何って…お前…に…似合うなちゅ、中国語って…くくっ」
「わーらーうーなー」
肩を震わすと、ケツを軽く蹴り上げられた。
痛いと言ったが笑いが止まらなかった。
「言っとくが俺すげぇ達者だからな。ペラペラだからな!」
「よ…よけいおもろいわばかたれ…」
おかしくて思わず食満の背中を仕返しのように蹴り上げた。
食満もさっきのように蹴り返してくる。
俺達を抜かして歩く学生達は、俺達を変な顔で見ていた。
「お前のドイツ語よりマシだ馬鹿」
「なんだと?お前なんかラムちゃんのラブソング中国語で歌え」
「なんだその罰ゲーム。日本語ですでに罰ゲームだろうが」
「だっちゃ、とか言え」
「それもう中国語関係ねぇよ。お前はゲルマン聖歌歌え」
「歌うか馬鹿もん、蹴るな」
「お前が蹴るのをやめたらな」
「俺もお前がやめたらやめてやる」
「俺もお前がやめたらやめてやる」
「蹴るな」
「お前がな」
「お前だろ」

軽口を言い合って、蹴り合っていたらいつの間にか学校についていて、それに気がついたのは、いつの間にか俺達の前にいた伊作が
「君達それやりながら学校来たの」
と言ってきてからだった。












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潮江と食満

ずっとやってろ!と言う仲の良さ。

宮上 100420

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