平日の午後、授業が終わって委員会が始まる。
雷蔵は委員会が嫌いではなかった。
本を読むことも触ることも好きで、何より委員会の面々に会うのが好きだった。
唯一5年の上に6年がいるこの委員会の委員長が中在家であって良かったと思う。
他の6年だったら---例えば、七松や潮江や仙蔵だったら---自分が苦労するのは目にみえていたから。(現に下の学年は振り回されていると聞くし)
(まぁ雷蔵が他の級友にそれを言うとお前のところも大概ではないかと言われるのだが)
とにかく、雷蔵は家族のような雰囲気の委員会を好いていた。
今日はみんなで集まって、図書整理をする日。
5人は各自わかれて作業を行う。
今日は少し時間がかかるかもしれない―委員会の始めに長次が言ったとおり量は多く、雷蔵はそろそろお茶でもいれようか、と図書室をでた。
そうだ、この間貰った茶菓子があった。
あ、長屋だ、と取りに行く。長屋には三郎がいて「よっ、雷蔵、委員会終わったのか?」と聞いてきた。
「んーん、まだ。えっと茶菓子をもらって…休憩にしようと…あれ?どこだったかな」
「そこそこ、ほら、雷蔵、もうちょっと右…あ、そこそこ」
「あ、あった、ありがとう、三郎!今日ちょっと遅くなるかもだから先にハチとへーすけと食べといてね!」
と声を大きくして言いながら部屋をでる。
「ひどーいらいぞーう!」
と泣きそうなこえで(わざとだろうが)言う三郎の声が聞こえたけれど雷蔵はそのまま歩き、図書室に戻る。



「委員長〜、そろそろ休憩にしませんか〜」
人数分の湯飲みと急須、それから茶菓子を持って図書室で長次を探す。
そうしよう、と言われたら下級生達を呼んで、みんなで食べよう。
西日がさしこんでいる場所を選んで五人で座って、少し話そう。
きっと怪士丸が話し始めて久作がのって、きり丸が皮肉ってみんなで笑うんだろう。ああ、楽しみだ。
けれど見つからない、おかしいなぁ、雷蔵は首をひねりながら探す。
「委員長〜?」
西日がうまく当たるところは図書室に三ヶ所あるがそのうち二つにはいなくて三ヶ所めにいくと、いた。
長次だけでなく、久作、きり丸、怪士丸もいた。いたにはいたが。
がたり、近くの机に茶菓子をおいて雷蔵はあとずさる。
がたり、もう一歩、もう一歩。とっさに思いついたことは「三郎にいわなくちゃ!」思いつくままに走って走って走って、

ばすーん!と音がするほど長屋のふすまを開ける。

驚いた顔のまま三郎が
「どうしたの、もう終わったの?」
と聞いてきた。
雷蔵はわなわな震えながら何とか声をだす。
「さ…さぶ…さぶろーおおおお!!」
もうほとんど泣きそうだ。
「ちょ…どうしたの雷蔵!雷蔵?委員会で何かあったの?」
「委員会が…あ…三郎さぶろおおおおお!!」
「…雷蔵はここで待っていて!」
そういい残して三郎は図書室まで走る。
何があったんだろう、雷蔵が委員会のことであんなに取り乱すのはめったにない。
いつも楽しそうに委員会の事を話しているから。(それはそれで三郎には腹の立つことだったが)

図書室に駆け込んだ三郎を待っていたのは、図書委員の面々だった。
ただその委員会の面々が少しいつもと違うだけだ。
あぐらをかいてすわっている長次の足の上に怪士丸が座り、長次にもたれかかり、長次の左足の太ももに頭をのせてごろりと寝ているきり丸、それから長次の右腕に顔だけ押し付けて目をつぶっている久作。
折り重なるように固まっている図書委員たちを見て、一瞬死んでいるのかと思った三郎は、思わず「なんだ、寝ているだけじゃないか」とつぶやいた。
「そうなんだよぉぉおお」
泣き声が後ろに聞こえて、ぎょっと振り返った三郎が、雷蔵、と名を呼んだ。
「かわいすぎるよおおおおー!どうしよう三郎!かわいいよー!まぜてほしいよー!抱きしめたいよー!」
とうわあああと泣き叫ぶ雷蔵に、三郎はため息をついて「そうだな」というだけにとどめ、コレを絵に書き写して世に残そう!といいそうなほど切羽詰った雷蔵を何とかなだめながらぐっすり眠る図書委員会に、早く起きろ、お騒がせやろうたちめ、と三郎は心の中で悪態をついた。













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家族過ぎる図書委員が好きです。
きりちゃんだってちょーじにお父さん、らいぞにお母さんの面影を探しちゃいます。
上二人はそれはそれは仲良かったら良いな!それで下級生を抱っこしたがります。
久作は逃げ回ります。

宮上 0900601




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