食満に夢見てるるる


こわくない




「ナメ太〜、ナメ郎〜、どこ行っちゃったの〜?」
声をあげて、学園内を探し回る。
悲しくて滲んだ涙をなんとか耐えて、一緒に探し回ってくれている金吾を思い出して、もう一度ナメさんの名前を呼んだ。
一年の長屋あたりは一通り探し回ってしまったので、他の学年を探し回る。
時刻は夕暮れ時、そろそろ探しにくくなる、と思うと余計に涙が出てきて、ぐずぐず鼻を鳴らしながら歩き回った。
すると井戸の近くに見知った顔を見つけ、思わず駆け寄った。

「食満せんぱぁーい」
顔を洗っていた食満が顔をあげて、驚いた顔をした。
キィン、と空気が凍った気がしたけれど、びくりと肩を揺らすと空気が溶けたので、もしかしたら気のせいかも知れなかった。
「おぅ、喜三太」
手ぬぐいを首にかけた食満が、どうしたと問うので、安心して足にしがみついた。
食満は土煙のにおいがした。
「せんぱぁーい…ナメ太とナメ郎がいなくなっちゃったんですぅ〜」
今、金吾も探してくれてるんですけどぉ〜
ぐじぐじと鼻をならして、必死に訴える。
あの二匹はどこへ行ってしまったんだろう。
お腹が減ってはいないだろうか。
帰り道がわからなくなってはいないだろうか。
「ひぐっ…今日の、朝にぃ、みんなで散歩した時の点呼にはぁっ…いたんですよぅ〜…ふぐっ…長屋にぃ、帰ってきたらぁ」
朝に散歩して、それからご飯も食べてない。
あの二匹は本当にどこに行ってしまったのか。
日が暮れる、夜になる、帰り道がわからなくなる。
外は危険がいっぱいだ、みんなで壺の中にいる方がどれだけ安全なことか。
それに何より、喜三太のこの寂しさはどうしようもない。
助けて欲しい。
この先輩なら助けてくれる。
相模にいたときの先輩にどこかよく似たこの先輩の大きな手のひらと低い声は喜三太をとても安心させてくれる。

ぐじぐじ泣きつかれた食満は、端正な眉を少し下げて、口を横に引っ張った。
それから、ゆっくり足にしがみついた小さい背中を撫でた。
落ち着くように、不安を取り除くように。
「そうか…大丈夫だ。見つかるさ。見つけたら部屋に持って行ってやるから」
だから、日が暮れる前に長屋にもどれ、喜三太。
低い声が聞こえて、その内容はとても心配しているものだったけれど、まだナメさんたちが見つかってはいないから、いいえ、まだ探しますといおうとして顔を上げた。
顔を見る前に、頭に大きい手のひらが降りてきて、なでられた。
途端、ガバリと身を離して、不思議そうな顔の食満に頭を下げた。
「お願いします!絶対連れて来て下さいねぇ〜!!」
「…おう」
驚いた顔をして、それからにこりと、任せとけ、と笑われて、背を向けて走る。
自分がどこに向かっているのかも良くわからなかった。
ナメさんたちの身が不安で、でもよぎるこの冷や汗は別のものだとわかる。

もう夕暮れも終わる、夜になる。
ナメさんたちは忍ナメだから、夜ぐらいきっとへっちゃらだ。
大丈夫。自分に何度も暗示をかけた。
明日になればきっと、きっと。
日が暮れる、喜三太は走り続ける。

食満の手のひらは、火薬と鉄のにおいがした。














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食満と喜三太
近所の面倒見のいいお兄ちゃんな食満が好き!

宮上 100417

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