時間は真夜中。
下級生は全員意識を飛ばして起きているのは私と先輩だけだ。
パチンパチンとそろばんを弾く音しか響いてなかったのでまぁいいやと声をだした。
ずっともやもやしていたのだ。

「先輩」
「何だ」

答えた先輩は私の方を見なかったけれど、私は手を止めてじっと先輩をみてやった。

「ほめてください」

「…はぁ?」



いつものように委員会が始まる少し前。
左門と左吉を待っていると団蔵がたたっと走ってあぐらをかいて座っている先輩の腰にかじり付いた。
「先輩先輩!聞いて下さいよ!」
一年生、特には組は怖いもの知らずが多くて、6年生にも平気でベタベタさわるのだ。
羨ましいとか別にそういう訳ではないけど、それはなんというか、子どもってすげぇと思う。
「どうした団蔵」
驚いた顔をして、団蔵のさせたいようにさせる先輩の肩をがっしり持った団蔵は嬉しそうにガッツポーズをした。
「僕!今日、手裏剣の授業で初めてくらす一番をとったんです!!」
先輩が来る前に、私にも言ったのに同じテンション、同じトーンで嬉しそうに言い切った団蔵に、一瞬どうするべきか困った顔をして、団蔵の頭に手をおいた。
「…おぉ、凄いな。よくやった」
ポンポンと大きい手のひらを団蔵の頭に乗せて、なんかいか撫でてほめる先輩は、めったに見せないような優しい笑顔を浮かべていた。
「へへっ!」
嬉しそうな2人を黙ってみている私は蚊帳の外で、なんとなく居心地が悪かった。
私も団蔵をほめてやったと言うのに。








先輩が私に向かって眉をひそめている。
一瞬詰まるが、もう言ってしまったから後には引けない。
部屋には左門の大きいいびきが響いた。
「私、石火矢の授業で満点をとりました。筆記テストで満点でした。掃除当番だったので教室も綺麗にしました。なので」

「ほめてください」

つらつらと語って、言い直した。
もう私の手も先輩の手も止まっている。
続きは明日になるかもしれない。
「…」
「…」
言いたい事を言った私はもう黙ってしまった。
先輩は何が起こったのかわからないという顔をしていた顔をしていて、あ、とかう、とか言っていた。
我慢できなくなって促す。
「先輩」


「あ、あー…その…よくやった、な?」

戸惑いながらも手をのばされたので、大人しく頭を突き出す。
ゆっくり大きい手で撫でられて、こんな風に頭を撫でられるのはいつぶりだろう、と笑う。
「ありがとうございます」
「…お、おう?」


団蔵のように、すんなりほめつ貰えたり甘えたりは出来なかったけど、先輩の困った顔が見られたのでまぁいいかと嬉しくなった。





私もほめて!














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アイドル学年は、突然なんか言い出して上の学年を困らせたら良いと思います。
ミキティもたまに文次郎相手にこんな事やればいいよ。


宮上 100417



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