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画面の中の彼は少し不機嫌そうだった。ごめん、と画面にお互いが確認できてすぐに黄瀬が謝ると、仕方ねえだろ、と青峰は不機嫌そうだったけれどそういってから許した。本当ならば今日は二人で休日だった、そういう予定だった。寒い冬だったけれど、黄瀬が外に行きたいといったから青峰も一緒に住んではいるけれど会うことは少ないのだから、黄瀬が言うことはできるだけいうことを叶えたいと思って、どっか行くか、と答えたから、結構前から計画を練っていた。だけれども、黄瀬が海外の仕事の時、雪で飛行が不可能で日本に帰ってこれなくなっていた。

「会いたかったス」
「俺もだ。けど、まー雪だし、誰のせいでもねえし」
「デート楽しみにしてたのに。マジ吹雪とかありえねえ、空気読んで欲しいッス」

画面の向こうで黄瀬は少し唇を尖らせてそういった。
その姿にやっぱり男のくせにかわいいやつだと、抱きしめたいという感情を青峰は抱く。会いたいって思うのはお互いよくあることだったが、今日はそれが強い。多分、珍しく計画的に予定を立ててそれを楽しみにしていたからだ。
黄瀬は画面の中で尖らせていた唇を微笑む形に変えて「なんだか青峰っち、今エッチしたいって顔してる」と言って笑った。まあ、否定はできないな。抱きしめたいしできるなら押し倒したい。残念ながら液晶にやったら悲惨な結果になるのは分かっている。

「やりてえな」
「あんたはいつもそればっかりッスね」
「うっせ。いつもじゃねえだろ、ちゃんと外行きたいってお前が言ったらちゃんと外行くようにしてる」

だけど、まあ、お前見たらむらむらする。そう素直に告げれば黄瀬は「そういうストレートなところ好きッス。俺もあんたに見てたらむらむらする」と言ってまた笑う。
しなくても良いから触りたい。抱きしめられて抱きしめて、おかえりって言ってただいまって言われたい。いつもしているはずなのに、いや、いつもしていることだからか、一日でもできないとそんなことがしたくてしたくてしかたない。
青峰はちょっと待ってろと言うと画面から消えて、一分もしないうちにビールを片手に帰ってきた。それをデスクの横に置くと、画面にもしっかりと映し出される。

「あんまり飲みすぎないようにするんスよ」
「いーんだよ、どうせ明日はすることないし寝てるから」

話をしたいけれど、電話ではどうももどかしい。時差もあるのだろう、青峰は少し俯いてから欠伸をした。わざわざ起きていてくれて面白くもない会話に付き合ってくれて、本当にいい男だ。
「だいくん好きッスよ」と言えば「急になんだよ、きめえ」とかそんな感じだけれども、やっぱりなんだか優しい。喧嘩だってよくしたし、いまだって喧嘩はよくする、言葉で言わないとこの人はバカだから伝わらないってよく分かったし、この人も何となく俺にちゃんと言わないと伝わらないって思っているはずだ。「俺も好きだ」じゃないと、こんなこと昔は全然言ってくれなかった。
会えないと寂しいなんて気持ちはあるが、昔よりはずっと落ち着いている。隣にいなくともああやっぱりお互いに好きなんだってわかるからだろうな。




そういう気持ちも、ゆっくりと目減りしていって
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