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身から出た錆4から3年後あたりの話


この二人を直接見るのは久しぶりですね、高校を卒業してから青峰くんはプロに入りましたし、黄瀬君もモデルを本業として忙しそうで、メールはたまにしてましたが会うのは1年半くらい久しぶりですね。サングラスとか帽子とかで一応顔を隠しているのでしょうけれど、彼らはそれでも目立ちます。周りの方々がチラチラとこちらの様子をうかがっているのがわかります。僕はこんな目立つ二人と同じテーブルにいたくないのでミスディレクションしたいのですが、話があると呼び出されたので消えるわけにはいきません。

「今日はどうしたんですか?青峰くんがNBAにスカウトされたことと、黄瀬くんが海外に移籍することはニュースとメールで聞いてますけど」

なんとなく予想はできるのですが、こうやって聞くのがお決まりになってしまっているので僕から切り出さなければならないのが悲しいところです。
「俺達、結婚することにしたんッス」と黄瀬くんははにかみながら僕に言ってくれました。サングラスで隠れているけれど、本当に嬉しいということが体中から伝わってきて、関係ない僕まで幸せな気分になりそうです。「アメリカで、ですか?」結婚は同性同士では日本ではできないので当たり前だと思いますが念のために聞いてみたら「籍はあっちで入れるんだけどよ、式は日本で挙げるつもりだ。わざわざアメリカまで来てもらうのは気が引けるからな」と青峰くんがご丁寧に説明してくれました。

「結婚式って言っても、身内で小さいけどな。どっちかというと送別会みたいな感じになる」
「青峰っちと俺と黒子っちが皆知ってる知り合いの中で、俺達の関係知ってる人だけしか呼ばないつもりッス」
「で、テツには色々と世話になったし、友人代表スピーチみたいなのを頼みたい」

とんとん拍子に彼らは説明してくれるのでありがたいのですが、僕なんかがそんな大層な役割を引き受けても良いんでしょうかね。とは、思ったのですが、共通の友人で彼らの秘密を知っている友人たちの顔、赤司くん、紫原くん、緑間くん、火神くん、などのメンバーを思い浮かべてみたら、確かに僕が一番そういうことには向いてそうですね。「わかりました、引き受けます」と言えば、「ありがとうッス」「ありがとな」と二人から嬉しそうにお礼を言われたら、頑張ろうかな、と少しだけノリ気になってきましたね。

「しかし、まさか結婚までするとは思ってもみませんでした」
「俺もッスよ〜、けど青峰っちが海外移籍になったから俺も事務所におねだりして海外の方に行くことにしたんッス」
「まぁ、どうせ行くなら結婚するか、って思っただけだ」

どうせ、とか言っているわりには青峰くんはどこか照れくさそうにしています。あー、本当に黄瀬くんのことが好きなんですね。彼らを引き合わせたものとしては、彼らがうまくいっていることがわかるのは嬉しいことです。
こうやって、彼らとマジバーガーで一緒に話したり相談に乗ったりツッコんだりするのも、あと少ししたらなくなるのは寂しいですね。ここにはこれから一人でくることになるのか。
しみじみと物思いにふけりながら過去を懐かしんでいたら、シェイクを飲む黄瀬くんの指に綺麗なシルバーリングを発見しました。青峰くんの方の指を見れば、同じものが青峰くんの指にも光っていました。

「それ、結婚指輪ですか」
「そうッスよ。貰ったッス」

指さしながら黄瀬くんに聞けば、芸能人が結婚会見をするように僕のほうに手の甲を見せるようにして指輪を見せてくれました。シンプルですが、品のある雰囲気が伝わってきます。「もっと派手なやつにするかって言ったのに、黄瀬がそれが良いって言ったんだよ」と青峰くんが自分の指輪を見ながら言いました。確かに少し二人にしてみたら地味といいますか落ち着きすぎている気がします。

「だって、あんまり派手だったり大きかったりしたら、青峰っちがバスケしにくいかと思ったんスよ」

そんなことにもお互いを気遣って、本当に二人は愛し合っているんですね。本音を言ってしまえば、いつか別れるんじゃないだろうか、こうやって呼び出される度に別れたことを知らすために呼び出したんじゃないだろうか、とひやひやしながらここに来ていました。
その心配ももう必要ないみたいです。今日はシェイクはもうなくなりましたが、今日くらいは二人の話に最後まで付き合おうかと思います。残り少ない友人たちとの時間を大切にしたいですからね。二人ともいつまでもお幸せに。




身から出た錆/fin
くだらないシリーズに最後までお付き合いありがとうございました
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