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何があったのか知りませんが、1時間おきに2人から呼び出しのメールを頂きました。黄瀬くんからのメールによると時間がかかる話らしいので、一時間遅くに連絡してきた青峰くん申し訳ないのですが今回は丁重にお断りのメールをして、いつものとおりマジバーガーで待ち合わせをしています。
連絡をしてきた黄瀬くんは先にいつもの定位置の席に座って、落ち着きなくプラスチックのカップに刺さったままのストローを指で摘んで弄くり回してます。別にそのことにはしたないとかつべこべ口を出すことはしませんが、いつまで経っても口を開こうとせずに下を向きっぱなしだと話が進まないので困ります。

「それで、今日の話とは何ですか?」
「あ、えっと、ッス、ね」
「もしかして青峰くんと何かあったんですか。青峰君からも実は連絡が来たんですが」

僕がそう言うのを聞くと、黄瀬くんは慌てた表情を一瞬して、だけとどこか幸せそうで、それでいて照れくさいといったように表情を数秒単位ごとに変化させていきます。本格的に何があったのか予知が不可能になりました。青峰くんと喧嘩したにしては、表情は緩みっぱなしですからね。
「で、何があったんですか」ともう一度黄瀬くんに聞いてみると、口を開いたかと思ったら、もう一度口を固く閉じてまた口を開きました。

「青峰っちに、キスされたんッスよ」
「キス・・・ですか」

言ってしまったら黄瀬は気が楽になったのか、周りを気にしてか恥ずかしいのかその他の理由かもしれませんが、小声で「いやー、雰囲気って怖いッスね。なんか、こう、ノリって言うんッスかね、青峰っちが格好良くて思わずキスしちゃったッス」と話してきた口調は、女子高生が恋バナをするのと遜色ないですね。パーフェクトコピー。

「キスしたってことは、2人は付き合い始めたんですね、良かったです」
「あ、ソレがですね、キスはしたんスけど・・・・告白はしてないしされてもないッス」

それで今日は相談しに黒子っちを呼んだんッスよぉ、と黄瀬くんは話てくれまいたが、その様子だと、僕はもう呼び出される必要は無いんじゃないでしょうか。キスしたということは、青峰くんにも多少なりとも黄瀬くんをそういう目で見てるってことでしょうから、告白してもOKを貰えそうですし、もしかしたら青峰くんから告白してくる可能性もありますね。

「とりあえず、今のままの関係は危ないと思うので告白はした方が良いと思いますよ」
「そうッスよねぇ・・・けど、断られたりしたら嫌だし」
「大丈夫です、黄瀬くんだったら。青峰くんも好きでもない人、しかも男とキスなんかしないですよ」

なんたって彼は胸が好きだと常日頃言っています、それなのに薄っぺらい胸板な黄瀬くんに好意無くしてキスなんて考えられません。そうは言っても黄瀬くんは「大丈夫・・・スかね」と不安そうな表情で、ストローでカップの中をかき回したまま心ここにあらずといった様子。
それは男同士ですから不安になるのは分かりますが、ずっとこのままでは僕が解放されるのは何時間後になるのかわかりません。やれやれ、という言葉が相応しいです。机の上に置いてあった黄瀬くんの携帯をそっと彼に気付かれないように、黄瀬くんはぼーっと物思いに老けていて普通に取ってもバレなかったと思いますが、そっと取ってから新規メールを作成して送信する。勿論、宛先は青峰くんです。
これで僕に出来ることは終わったので、邪魔者は退散しましょうか。

「え、黒子っちもう帰るんスか、相談乗ってくださいッスよ」
「青峰くんを呼んでおきました。後は当人達で解決してください」

席を立ち上がってから、黄瀬くんにそう言うと黄瀬くんは面白いくらいに慌てふためいてました。「え?」とか「へ?」とかそんな単語を繰り返していて、見ているのは面白いですが、さっさと出ないと色々と面倒ですので黄瀬くんには悪いですが退散させて頂きます。頑張ってください、2人とも。
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