テキスト | ナノ
「とーと」「パパ」から何故か「ボス」「キーちゃん」呼びに変わった。ちょっと前に見たスパイ映画で黄瀬が悪戯で「ボス」と呼んでいたのがなぜか定着した。それにし返すように青峰も黄瀬のことを「きーちゃん」と呼んでいたら、これまた定着した。直輝は背が伸びた、今は3歳。わんぱくでよく家の中を青峰と走り回っている。だけど最近は良い子になった。家族が増えたから、黄瀬に似た男の子と女の子の双子。

「きーちゃんが二人いる」
「きーちゃんじゃなくて、『すずか』と『りょうすけ』な。ちゃんと名前呼んでやれ」
「すずか、りょうすけ・・・・」

直輝と双子が合うのは今日が初めてだ。入院から無事に退院して帰ってきたら、すでに玄関でお出迎えしてくれていた、おかえりなさいボスときーちゃん、と嬉しそうにして言って長男は待っていた。黒子も慌てて飛び出した直輝に苦笑しながらリビングから迎えてくれた。屈んで双子を見せてから、名前を教えて上がると嬉しそうに名前を呼んだ長男を見て青峰も黄瀬も安堵した。
玄関で話すのは黄瀬と生まれたばかりの子供にはあまりよくないので、黄瀬を立たせて直輝の背中を押しながらリビングに向かった。直輝が2歳の時に買い替えた大きなソファーに皆で座る。双子を抱いている黄瀬の隣は長男が取った。
黄瀬に似た整った顔立ちと、綺麗な金髪。それを見て直輝は「きーちゃんだ」とまた呟いた。瞳の色は直輝と一緒の澄んだグリーン。
涼花と涼介。黄瀬の名前から一文字とって青峰が名づけた。男の子と女の子の双子だと分かってから、二人とも「りょう」だと分かりにくいからと「すずか」になった。

「直輝くんは青峰くんにうりふたつですが、涼介くんと涼花ちゃんは黄瀬君にそっくりですね」
「本当に俺に似て美人でかわいくて困るッスよ」
「うぜぇ」

青峰が黄瀬を叩く。勿論軽くで冗談のじゃれあいだ。「けど、本当にかわいいっしょ?」と黄瀬が青峰に聞けば「そうだな」とさらりと青峰が返してきて逆に黄瀬は反応に困った。

「きっとお前は美人になるな〜すずか、よかったな」

そう言って、黄瀬の腕から涼花を青峰は抜き取った。まだ生まれたばかりでどちらかどちらなのかあまりわかないのに、分かるのはやはり両親だからだろうと、流れるような一連の動作を見た黒子は思った。黒子には流石双子というのか二人は男の子も女の子もかわいらしく区別はつかない。
だっこ!と直輝が言った。それは自分が抱いて欲しいわけではなく、涼花をだっこしたいということだと黄瀬は悟ると、そっと涼花を抱かせた。落とさないように手を支えるようにしながらも、直輝はその小さな赤ん坊を抱き締めた。
小さい、と呟いた直輝に「君もこんなに小さい赤ん坊だったんですよ」と黒子が言えば驚いた顔をした。想像できないだろうが、そうだった。直輝もこの子達と同じくらいに小さかった。今ではこんなに大きく成長してしまったが、それは喜ばしいこと。

「可愛がって、優しくしてあげて。直輝が二人を守ってあげて」
「うん」

黄瀬が云うと直輝はしっかりと頷いた。その様子を見て「君たちの子にしてはしっかりしてますね」「そうだよな、しっかりしてんだよな」と黒子と青峰が二人で微笑ましく見守った。
この3年間は怒濤の3年間だった。何が正しくて何が悪いのか分からずに必死に働き子どもを育てた。気まずいとか言っていられなく、両親や近所の人に色々と聞いて助けてもらった。
風邪は何度か引いて慌てたこともあったが大きな怪我も病気もなくなんとか健康にすくすくと長男は育った。青峰がバスケをしているからか影響を受けたのか、まだ、大きなオモチャのボールを持って直輝もバスケをしている。
可愛い可愛い我が子。どちらが大切とか考えられない、どちらも大切。

「頑張ってますね。ボス」
「ボスって言って良いのは涼太と直輝だけだ…」
「双子は?」
「あいつらはお父さんとパパって呼ばせる」

ボスといわれるのを少し青峰は気にしていると、黄瀬から黒子は聞いていた。家の中でなら良いが、外でも呼ばれているらしい。自分の顔が人相が悪いことはわかっているので、慌てるとも言っていた。
「今度はとーさんってちゃんと呼んでくれよな」と青峰は腕の中の涼花に呼び掛ける。可愛い女の子は、きゃっきゃと青峰に手を伸ばしていた。思ったよりも女の子も元気で明るい、大人しいのは男の子の方だった。
きっとままごととかするんだよな、って考えると少し焦る。青峰も黄瀬も男で、直輝も男で、女の子は初めて。思春期とかきたら相談には乗れないから、桃井あたりに頻繁に来て貰おう、とか考える。毎回心配するのが早い、と青峰に黄瀬は云われるが仕方ない、母親がいないから自分たちにできることは限られているんだから。
なんでも良い、元気でいてくれれば。そう思って黄瀬は直輝と涼介を二人まとめて抱き締めた。直輝は不思議そうに、きーちゃんどうした、と聞いてきて、その口調も青峰に似てきたな、と思うと和んで不安も消えてしまう。

「大好きだよ、って思ったんだよ」
「ボスよりもオレの方が好き?」
「んー、ボスは愛してる、直輝は大好き、涼花も涼介も大好き」

だそうですけど、と黒子が青峰を見れば、青峰は分かりにくいが照れながら、あの駄犬が…と呟いていた。
皆大切だ。一番は皆。けど、愛してるのは大輝だけだから、と黄瀬は言って微笑んだ。青峰はその微笑んだ唇に、口づけた。



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