テキスト | ナノ
※中学3年



授業が終わり、部活に行こうかと部室に向かって廊下を歩いていると向こう側に青峰がいるのを見つけた。向きからして彼はまた部活を無断欠席することが分かる。青峰は手に何かの紙を数枚持っていて、それを読んでいるのか黄瀬に気付く様子は無かった。
鞄を方にかけ直して、黄瀬は「青峰っち」と名前を呼びながら青峰に近寄っていく。名前を呼ばれてようやく青峰は黄瀬の存在に気付いて、めんどくさそうな顔をした。

「んだよ、黄瀬。まさか、部活に来いなんてこと言うわけじゃねぇだろうな」
「そんなこと言うわけ無いッスよ。言っても絶対に来ないこと分かってるのに」

黄瀬が苦笑しながらそう言うと、青峰は鼻で笑ってから「わかってんじゃん」と少しだけ機嫌が良さそうに言った。それで何の用だ、と青峰が聞いてくるが、特に用があったわけでも無いことを伝えると、青峰は呆れながら黄瀬の頭を軽く叩いた。その拍子に持っていた紙が掠れる音がする。

「何ッスか、その紙?」

叩かれた頭を抑えながら黄瀬が聞くと、青峰は説明するのが面倒なのかその紙を黄瀬に手渡す。黄瀬は受け取り、その資料を見る。桐皇学園、とその紙の一番上には書かれていて、その学園に関する細かな説明が書かれていた。開かれていたのはバスケ部のデータのページ。
「青峰っち、ここに行くんッスか?」と聞けば「面白そうだったからな」と言って、黄瀬から青峰は資料を奪い取った。資料に書かれていた場所を思い出せば東京都内だ、黄瀬が行く海常は神奈川で離れることになる。

「離ればなれッスね」
「何きしょいこと言ってんだよ。東京と神奈川だったら電車で直ぐだろ」

それでも、とごねる黄瀬の頭に青峰はもう一回叩いた。神奈川と東京なんて行こうと思えば直ぐに行ける距離だ、そう軽く青峰は思っていたが、黄瀬に言われると何だかもう少し遠くに行ってしまうような感覚に一瞬陥りそうになる。痛いッスよ、と喚く黄瀬の頭を叩こうとして、ためらってから青峰は黄瀬の頭を少し激しく撫でる。綺麗に整っていた黄瀬の髪がぐしゃぐしゃになった。

「お前が会えに来れば良いんだろ」
「青峰っちが会いに来てくれたりはしないッスか」
「はぁ、めんどいだろ」

そういう青峰に黄瀬は何か言おうと口を開こうとしたが、言っても無駄なことを思い出して、止める。暴君、俺様、だからそれでも、来いと言ってくれただけマシだと思った。
毎日メールすると黄瀬が言えば「うぜぇ」と青峰は言った。その口元が僅かに緩んでいるのを黄瀬は見逃さない。




ただすこし寂しいだけの
タイトル ごめんねママ
リア充
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