テキスト | ナノ
※黒子がテツナちゃん♀



棚一面に並ぶDVDを横目で眺めながら歩いていく。面白そうなタイトルやジャケットを見つけると、屈んだり手を伸ばしたりしながらそれを取り寄せてから、黒子は後ろのあらすじを読んだ。残念ながら内容はどこかでみたことがあるようなありきたりな物でわざわざ借りて見るものでもないと思い、黒子は元の場所にそれを押し込んだ。
少し離れた場所から青峰が1つのDVDを持って走ってきて「これとかどうだ?」と言って、黒子に持っていたものを手渡した。それはかろうじてR指定が入らないようなラブロマンス系のDVDだと、あらすじを読まなくてもパッケージで黒子は理解した。

「残念ながら駄目です。見るなら一人で夜中に見て下さい」

そう言って青峰にDVDを押しつけて、再び棚のDVDの物色を再開する。残念そうな表情をしながら青峰はそれを戻しにまた走っていった。
久々の休みだからと、二人で会うことになったのは良いけれどお互いの生活の中心はバスケで、いつも休みでさえバスケをしてしまう。今回こそ何か別のことをしよう、と黒子からDVD鑑賞をすることを提案した。最初は映画を見に行く予定だったが、部活帰りの買い食いなどで青峰の財布には映画を見れるような金額は入っていなかった。
結局色々と2人で話し合ったりした結果、どこかで見たことがあるような在り来たりな恋愛物を借りた。

「やっぱ、テツナもそんなやつが好きなんだな」
「女の子は誰でも好きだと思いますよ」

DVDの入った袋を持ってレンタルショップを出る。
帰り道はやっぱりバスケの話をしてしまいながら、青峰の家に向かった。相変わらず汚い男子らしい部屋を見て、「人が来ること予め分かっていたんですから片づけて下さいよ」と黒子は少し文句を言いながら部屋に上がる。雑誌や服を適当に片づけて部屋の隅に押しやり、座るスペースを作った。
青峰が袋からDVDを取り出してデッキの中に押し入れる。テレビを点け、チャンネルを弄ってDVDを見れるようにすると、黒子が作ったスペースの隣に自分も座った。

「テツ、」
「青峰君、もうすぐ始まるので黙って下さい」

青峰は何か言いたそうにしたが、はっきりと黒子が言い切ったので大人しく半開きだった口を閉じた。その代わりに、少し空いていた間を詰めた。
映画が始まると、やっぱり在り来たりでもいい話だった。良くも悪くもシンデレラストーリー、有り得ないけれどそれが映画の良いところだ。青峰は詰まらなそうに数回欠伸をしたり、ちょっかいを出してきたけれど黒子は適度に相手をしながらも映画を見た。
パッケージの裏に書かれていたあらすじ通りに、主人公達は結ばれることはない。泣くことはなかったけれど、それでも黒子はほんの僅かに目頭が熱くなった。

「何だよ、テツナ泣いてんのか?」
「泣いてなんかいません」
「目が潤んでるぞ」
「潤んでいるだけで泣いてなんかいません」

からかう口ぶりで青峰は黒子の目を指さして、それからティッシュの箱を荷物の中から探し出して黒子に手渡した。箱は荷物の重さで凹んだりしていて、ロマンティックの欠片も無い。「だから、泣いてなんかないんですけど」と言いながらも、黒子はそれを受け取ってからティッシュを1枚抜き出した。目頭に押し当てれば、ティッシュに少しだけシミが出来た。
映画のあの子は幸せじゃなかったけど、見ててわたしが貴女にできなかったことをしてみせる。この馬鹿な人と。


























タイトル by 花畑心中
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -