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だいたい20歳くらいです
日本でバスケしていた峰とモデル黄瀬




ベットに寝ころびながら黄瀬は口を開いた。「俺は誰も愛せないんだと思ってた」
小さなころから異性には愛されていた、告白もされた、付き合った、キスもセックスもした。それでも相手のことを愛してるとは思えなかった。薄情な人間だと思った。この子はきっと俺の運命の人じゃないんだろうな、って思って、また別の女の子を抱いたけれど、やっぱり何か違っていた。あの子も違うこの子も違う、じゃあ誰だ。
誰も俺の運命の人はいないんだなあって、そう思って、なんとなく諦めていた。だけど今は全然違う。「あんたのこと愛し過ぎて自分が気持ちわりいッスよ」黄瀬はそういって笑って、青峰の腰に抱きついて軽くしっかりと筋肉がついて割れている腹筋にキスをした。
愛というのはこんなにも素晴らしいものだった。多分俺の愛はこの人のためにしか存在できない。女の子も男だってどっちも俺は愛せない、この人以外は愛するという対象にもならないのだ。

「多分だけど、お前は愛するよりも愛されるってか、ただ愛されたいんじゃねえの」

俺に。
そういって青峰っちは俺の唇にキスをした。ああ、うん、多分ってか絶対そうだ。俺はこの人に愛されたいんだ。だけどちゃんと愛したい。青峰大輝という人物を愛したんだよなあって思った。この人が愛されたバスケの女神様よりも、絶対俺の方がこの人のことを愛している気がする。気がするんじゃない、してる、ゼッタイしてる。こんな臭い台詞いう人なら、あんた以外ならソッコーで別れてるわ。
ちゃんと青峰っちのこと大好きッスよ、そういって笑えば、あんたは俺の髪を愛おしそうに、その大きな掌でわしゃわしゃ撫でてくれて、それだけで十分に俺は幸せだ。この人しか俺は愛せないし、この人からしか愛は受け付けない。だから、一生分の愛という愛を受け取ったので、俺はいつ青峰っちから別れを告げられても大丈夫。この一生分の愛を胸に抱いて俺は死ぬんだ、この短い時間の愛だけで俺はこれからも生きていける。

「お前、約束覚えてんだろ。…悪いけど、あれ無しにしてくんねえ」

プロポーズは18歳の時だった。高校卒業して同棲する形で一緒にくらしていて、今も同じマンションに一緒にすんでいる。二十歳になったら結婚すっか、って確かテレビ見てる時に言われた気がする。そうッスね、とか適当に返した気がする。気がするって書いているのは、本当に気がするからで、なんで気がするかって言われたら俺はそのプロポーズを本気だと思っていなかったからだ。だって、ムードもなにもなかった。部屋は明るくて、テレビで流れているのも恋愛ものとかじゃなくてバラエティだった、指輪もなかった。
俺はだから多分冗談だろうなって思って、そうッスね、と言った。だけどやっぱり本当になったら良いなって思ってしまった。両親に挨拶して形だけでも家族になりたいなんて。
けどさ、ちゃんと、別れようと言われたら、良いよ、って言う準備はいつだってしていたのだ。最近青峰が下部リーグだがアメリカのチームにスカウトされて、そろそろ別れる準備をしないとなあ、と本格的に心の準備をしていた。泣かないで送りだして、時々試合見に行ったりして、時々会ったりして、そんな友達みたいに会話できるシチュエーションを脳内で何回も繰り返して、いつ別れようって言われても大丈夫だ、って思えていたはずだ。時間はかかるかもしれないし、青峰以上に好きになれる人は絶対いないし独身で寂しく死んでいくことも考えて、だけど青峰っちが駆け付けてくれて一瞬だけでも死ぬ前に顔が見れたらひとりで死んでいっても悲しくはないな、って人生の最後まで考えていた。死ぬまでの人生、今日までの二人の思い出で十分に幸せな気持ちで、愛を思い出しながら生きていける。そう思っていた。

「本当に悪い」

それがどうした、今は甘ったるいセックスの後で、幸せな空気で実際に幸せな雰囲気で、黄瀬は幸せだった。
急にそんなことを今この空気で言うなんて、誰が考えるだろうか。黄瀬も理解できなくて、今まで別れ話された時の練習なんて意味も無かった。別れ話なんて今まで何回もあったが、それは全部黄瀬が言い出したことで、青峰はそれを引き止めて宥めて謝って絆して甘やかして今の今まで続いてきた。だから青峰から別れ話をされるなんて初めてであり、黄瀬は無表情のままに涙を流した。嫌だ、泣きながら無表情に黄瀬は青峰に告げた。「二十歳になったら結婚しようって言ったのはあんただろ」言葉は案外はっきりと出てきた。

「アメリカに行くって話しただろ。けどまだ下部リーグだし、契約金も少ないし、怪我をそこでしたら上はもう狙えねえよ。俺だけが好きなことしてて、それでいてそんな不安定な生活に、今の生活とか仕事捨てて付いてきて欲しいなんて言えねえ。」
「そんなの、それくらい我慢出来るし、あんたと一緒にいれれば全部、全部いらねースよ。」

貧乏でも家が狭くても美味しいものが食べれなくても綺麗な服が買えなくても、青峰大輝さえいれば黄瀬涼太には何も望むものはない。あんたに愛されなくなったらどうすればいいのかわからない、愛するあんたを失ったら何を愛せばいいんだ。
泣きながら、だが黄瀬は淡々と告げた。青峰はそんな黄瀬を抱きしめた。頑張るから、お前も一緒に来てくれ。そういった青峰も静かに泣いていて、二人で毛布にくるまって泣いているが、とても幸せだった。



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人生なんか多少おろそかにしたくらいでどうにもなんねえよ/ごめんねママ

続きます
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