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初めてのプロポーズは18歳の時だった。高校卒業して同棲する形で一緒にくらしていて、今も同じマンションに一緒にすんでいる。二十歳になったら結婚すっか、って確かテレビ見てる時に言われた気がする。そうッスね、とか適当に返した気がする。気がするって書いているのは、本当に気がするからで、なんで気がするかって言われたら俺はそのプロポーズを本気だと思っていなかったからだ。だって、ムードもなにもなかった。部屋は明るくて、テレビで流れているのも恋愛ものとかじゃなくてバラエティだった、指輪もなかった。
俺はだから多分冗談だろうなって思って、そうッスね、と言った。別れようと言われたら、良いよ、って言う準備はいつだってしていたのだ。最近青峰が下部リーグだがアメリカのチームにスカウトされて、そろそろ別れる準備をしないとなあ、と本格的に心の準備をしていた。泣かないで送りだして、時々試合見に行ったりして、時々会ったりして、そんな友達みたいに会話できるシチュエーションを脳内で何回も繰り返して、いつ別れようって言われても大丈夫だ、って思えていたはずだ。時間はかかるかもしれないし、青峰以上に好きになれる人は絶対いないし独身で寂しく死んでいくことも考えて、だけど青峰っちが駆け付けてくれて一瞬だけでも死ぬ前に顔が見れたらひとりで死んでいっても悲しくはないな、って人生の最後まで考えていた。

「返事は?」

それがどうした、目の前にあるのは指輪だ
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テーマ「人外ファンタジー」
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