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同棲



スーパーに入ると入口近くに積まれてあるカゴを手に取ってから、青峰にそれを黄瀬は押し付けた。渋った表情を見せたけれど、青峰はそれにおとなしく従ってカゴを受け取った。店内は夜中の9時を超えていてもうすぐ閉まる店内には客の姿は見えない。そんな時間帯に二人が店に来たのは、腹が減ったから何か作れ、と青峰が言ったからだった。だから荷物持ちくらいしてくれてもいいだろうと黄瀬は思う。
何か作れ、とは言われたけれど、注文を受けてなくて「何が良いッスか?」と隣を歩く青峰に黄瀬は聞いた。

「テリヤキバーガー」
「それは流石に無理、ってか食べたいなら買いに行け」
「はぁ、怠いって。まあ、無理だったらお前に任せるわ」

投げやりに言えば、黄瀬はハンバーガーは無理なんでハンバーグで良いッスか、と聞いてきたので青峰は頷いて肯定の意思を示した。
肉肉と呟きながら歩いていく黄瀬の後ろを青峰は追いかけて歩く。野菜が置いてあるコーナーを通り過ぎて、奥の方に向かう。その間に誰にもすれ違わなかった。途中で黄瀬は立ち止まって「玉ねぎ有ったっけ?」っと聞いてきたが、飲み物と小腹がすいたら適当に食べ物を漁るだけで、青峰は冷蔵庫の中身なんて把握しているはずもない。

「さぁ、知らねえ」
「じゃあ一応買っておくから玉ねぎ一つ取って」

そういわれて、青峰は横に並べてある玉ねぎを一つ取ってカゴに入れる。それを確認した黄瀬は、また青峰の少し前を歩き始める。
肉が置いてあるコーナーにたどり着くと、黄瀬はパック一つ一つを見てから「多く食べる、それとも1個で良い?」と聞いてくる。結構腹減った、と伝えれば大き目のパックが手渡される。青峰はそれをカゴにまた入れた。多分あとは家に材料あると思うから後は支払いだけッス、と黄瀬は振り返って言った。出かけるときは少しめんどくさそうで不満げだった表情が、楽しそうに微笑んでいる。

「なんで楽しそうな訳?」
「だって、なんか夫婦っぽいな〜って思ってさ」

いつも買い物一人だから嬉しいなって思ったんスよ、黄瀬はそういってまた少し締まりのない笑顔を見せる。なんだか我儘言ったのに一人で喜んでいる黄瀬を見て、青峰は思わず苦笑した。不思議そうに青峰の様子をうかがってくる黄瀬を、青峰は不味かったら離婚だからなとおどけた口調で言ってから、黄瀬の頭をカゴを持たない手でくしゃっと撫でた。
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