テキスト | ナノ
※黒子が♀



練習が終わった帰り道、止まることが日課となった道で「目を閉じろ」と青峰に言われて黒子はおもむろに目を閉じれば、優しく触れるだけのキスが一度だけ。一瞬、皮膚の薄皮だけが触れ合っただけなのに、体中が何か得体の知れないものが流れる感覚。だけどもう一度したいとは思わないのが不思議だった。目を開ければ笑いながら青峰君が目の前に居て、そんな青峰君に笑い返せないことが申し訳なかった。

「テツは笑わないよな」
「笑って欲しいですか?」
「別に。急に笑い始めたらそれはそれで不気味だし」

けど、キスの時くらいは笑って欲しいかもな、と言ってから青峰は笑った。前から隣に移動して、もう一度歩き始める。歩調を合わせてくれていて、黒子が5歩歩いていれば青峰は3歩くらいしか歩いていなかった。
青峰君はあの態度や体格や雰囲気、その他エトセトラのもので誤解を受けやすい。少し我が強く、体格も普通の男性と比べても遜色がないどころか二回りくらいは身長も高いので、威圧的だと思われていることが多々。それは完全に否定することは出来ないが、それでも部分的否定なら出来る箇所がある。今のように歩調を合わせてくれたり、意外と親切だったり、キスが優しかったり、その他エトセトラ。

「たまにテツが俺のこと好きなのか分かんなくなるときがあるからな」
「青峰君のことは好きだか分かりません」

驚いたように黒子を青峰は見たが、黒子はいつものように無表情のままだ。「だけど、バスケしている青峰君はかっこいいと思います。だから多分好きなんだと思います」無表情のままそう言われても普通なら納得がいかない台詞だけれど、黒子が冗談を軽々しく言えるような性格では無いことを知っている。
もう一度前を向いてから歩き出す。先程コンビニで買った物が入っているビニール袋ががさがさと小さく掠れる音がする。外は完璧に日が落ちていて暗くなっていて、人影もまばら。靴の踵がアスファルトを擦る音すら鮮明に聞こえる。他の物があまり存在を主張しなく、彼女をいつもよりも強く意識した。

「テツって男前だよな、女なのに」
「それは褒めているんですか?」
「すげー褒めてる。ってか、そーゆう所に惚れた」

もう一度目を閉じるように青峰は黒子に指示をすれば、また黒子はゆっくりと瞼を閉じた。もう一度軽く触れるだけのキスをする。
キスが好きですね、と黒子がまた無表情に言っているけれど、僅かに口調の雰囲気で彼女も満更でもないことが分かった。もう一度青峰がキスしようとすると、彼女の青白い掌が青峰の口を覆った。「だからって数をこなせばいいってものじゃないんです」そう言う黒子はどこか愉快そうだった。


くちびるの使い方/ごめんねママ
黒子♀はキスは1日2回までしか許さないとか面白いと思ったんで
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