テキスト | ナノ
緑間が女の子



緑間が作った夕飯を食べ終わって、皿を洗おうとする彼女を部屋に追い返して高尾はキッチンで皿を洗い始める。腕の裾をたくし上げて、スポンジを手に取り少し水で濡らしてから洗剤をつけて泡立てる。水を流しながら、皿の汚れを洗い落とす。
いまだにこちらを気遣ってからか、緑間は視線を高尾に投げかけてくる。甘えがないというとか、人に頼ることに遠慮がある。俺がしたいから気にするな、という意味合いを込めて高尾は緑間に微笑み返すと、少し緑間は眉間にしわを寄せる。それから、ゆっくりと体を反転させてまたテレビを見始めた。

「なーに見てんの?」
「テレビなのだよ」
「いや、それは見ればわかるから」

皿を洗い終わってから、床に座る緑間の隣に高尾も笑いながら腰掛ける。テレビはハプニング映像みたいなものを流しているが今は特集なのか、ちょうどよいタイミングで結婚式やプロポーズの映像を流している。テレビの中での人々は、突然のプロポーズに驚いたり泣いたり抱きついたり、見ているこちらまで幸せが伝わってくる。彼氏達は必死に計画してきた、突然周りが歌いだしたり踊りだしたりするフラッシュ・モブというものらしい、プロポーズをやっている。
高尾はテレビを見ながら緑間の様子をうかがった。彼女は特に何の反応も見せずにただ淡々と画面を見つめている。少し早くなる心拍数を落ち着かせようと、高尾は目を閉じた。それからそのままポケットに手を入れて、中に入っている指輪の形を指先で確認するように触れた。

「あーいうの、真ちゃんも好き?」

そういう自分の声が震えているかもしれない、と高尾は心配になった。もし、ここで彼女はうん、とか、そうだな、とか言えば今日やめよう。ぐっと、ポケットの中から出して握りしめている指輪を一層強く高尾は握りしめる。プロポーズはいつでもできる、だたら彼女が一番好きな形で一番感動できるようなものにしたい。
暫く緑間は高尾の質問に答えなかったが、「別に、どんな形であれされれば嬉しいのだよ」とだけ小声で答えて、首を少しだけ下にした。頬が熱くなるのを緑間は感じた。彼女が言った言葉は本心だった。あんなに手の凝ったものでなくても、高尾からの言葉であればどんな状況でもよい、と緑間は思っている。

「本当に?高いお店で美味しいご飯食べたりしながらとか、この番組みたいなサプライズじゃなくてもいいわけ?」
「そういっているのだよ」
「本当に?マジで?」

さっきの自分の言葉が恥ずかしく、テレビの方を見たまま受け答えしていたが、高尾が何度も聞いてくるので、しつこいのだよ、と横を向いて言おうとしたら目の前に握りしめられた高尾の掌が差し出される。何かわからずに眺めていると、ゆっくりと高尾は掌を開いていき「結婚してください」と言った。すっかり開ききった高尾の掌の上には、シルバーリングが2つ寄り添うように重なり合って転がっている。馬鹿尾が、そう言った俯いた彼女の肩は小さく震えていた。



僕らどうやって永遠になろう
title by ごめんねママ
ちまさんリクエスト・高緑♀でプロポーズ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -