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S/E/X P/I/S/T/O/L/Sという漫画のパロ(おおまかな世界観と設定)


リアカーの後ろに乗った緑間から、自転車を漕いでいる高尾へ、幾度目かわからない質問だった。緑間はいつもと同じように荷物を載せるところに変なラッキーアイテムを置いて、自分は右手にお汁粉を握っていた。そのお汁粉は元からあった温かさよりは冷えていたが、いまだにやわらかい温かさは保ったままで緑間の右手を温めている。
「お前の魂現は一体何なのだよ」と緑間は吐き捨てるように言うと、お汁粉をすすった。おそらく吐き捨てるように言ったのは、高尾がまた同じ問答を繰り返すからだと半分諦めているからだろう。その緑間の予想は的中して高尾は「いつも言ってんじゃん、蛇の目の中間種だってば」と高尾は緑間の方を振り返ることなく足を動かして前を向いていた。

「だったら、魂現を見せるのだよ」
「一回見せただろ」
「一度だけだ、それがら見たことはない」

緑間の声がワントーン下がる。それに気づいて「だから、重種の真ちゃんの前で魂現になるのって中間種の俺からしたらちょっと恥ずかしいんだって、分かって?」と、高尾はペダルから足を下ろし、地面に靴を触れさせる。それから振り返って、念を押すように、ねぇ、と苦笑しながら緑間を見た。不快そうな表情で自分を見ている緑間に、高尾は申し訳ない気持ちになったが、それでも誤魔化すように笑うしかできない。
魂現を見せるのは猿人でいうならば裸になるようなものだ、だからお互いが心を許しあっていないと意識しては見せようとはしない。一度しか高尾の魂現を見たことがないのを、緑間は心を許してもらえてないからだと思っていたが、それは誤解だ。
高尾和成は、おそらく今生きている中では数人いるのかもわからないような、翼手だった。それでいて重種であるから、とても貴重な存在で下手をしたら命を狙われることだってある、だから普段は蛇の目のふりをしているが蛇の目のふりをするのはそれはそれで大変だった。

「別に真ちゃんのことが嫌いになったとかじゃないから」
「それもだが、」
「他にも気になることがあるの、言ってよ」
「たまに高尾の目がおそろしいのだよ、この重種の俺がだ」

絶対的ヒエラルキーのトップにいる重種である緑間が、たかが中間種に畏怖を感じさせることはありえない。それでも、緑間は高尾の目が恐ろしくなる時がある。「気のせいだって、俺中間種だぜ、真ちゃん」と高尾は笑って、また前を向いた。ペダルに再び足を置いて漕ぎ始める。小さな振動が荷台にも伝わり、それからゆっくりと動き始めた。いつか子供ができたら、その時は話そうと高尾は考えていた。緑間がしっかりと自分の真実を受け入れてくれ、それでいて他言無用でいてくれ、自分から離れることがないと確証が持てて初めて話そうと思っていたのだ。口が軽いと緑間を疑っているとかではないが、それでも念には念をいれて、高尾はかたくなに口を閉ざした。驚かれたり、引け目を感じさせたりするのが嫌で、簡単に言えば自分が臆病なだけだ。あとちょっと待っててよ、と高尾は聞こえないくらいに掠れる声で緑間に詫びた。
いつも自転車を漕ぐ高尾の背中が、ときたまひどく窮屈そうに緑間には見える。



きみといれるようにつくった体
title by ごめんねママ
リクエストで高緑/勝手にセクピスパロ第二弾
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