テキスト | ナノ
※桐皇黄瀬設定/インターハイの前
この話を少し引用



授業が終わると、黄瀬は鞄を持ち青峰のクラスに向かう。途中で女の子に幾度か声をかけられるが、適当に話を流して会話を終わらせた。正直構うのも面倒だけれどもイメージというものは大事だ。足早に教室に急げば、青峰は机に俯せている。寝ているのか、ただ暇を持て余しているのか顔が見えないので黄瀬にはわからなかった。
クラスの扉の前で、青峰っち、と黄瀬が名前を呼べば、おーっと間延びした声で返事をして、机から青峰は身体を離した。それから、欠伸を一回、長いものをしてから机の横にかけてある鞄を手に取って椅子から立ち上がる。

「今日はどこ行きたいッスか?」
「んじゃ、ゲーセンにでも行くか、暇だし」

廊下を歩く足は、体育館には向かわない。黄瀬はときたま練習に出るけれども、ほとんどは青峰に付いて練習にはいくことはない。それは中学のころから変わりなく、習慣のようになっている。お互い、そのことに対して不満もなく当たり前だと納得していた。
靴箱から靴を取り出して靴に履きかえると、こんこんとつま先を打ち付けて、ずれていたところを修正する。そういえばよ、と青峰が声をかける。

「もうすぐインターハイだな」
「そうっスね、そろそろ俺は練習に顔だそうかな」
「は、マジか」

青峰は心底驚いたような言い方だったか、その表情はどこかバカにしているような雰囲気を持っている。「俺は青峰っちみたいにチートじゃないんスよ、たしぃーは練習しないと」と黄瀬は笑って受け答えをした。
なんとなくだったが、黄瀬は黒子と当たるような気がした。同じ東京だから、ありえなくもない話。唐突に昔、自分が青峰にした話を思いだす。黄瀬が青峰についていく、そういった話をしたのだ。それほどまでの影響は青峰は黄瀬に与えていたし、なんらおかしなことは何もなかった、それに黄瀬は青峰が、青峰は黄瀬が好きだったからなおさら不思議なことなどなかった。

「まぁ、俺とお前がいて負けるわけないだろ」

と青峰が言った言葉は、ちょうど自分が思い出していた話を思い出させて、黄瀬は思わう口元が緩んだ。歩いていると、体育館からボールが跳ねる音と怒鳴るように注意する声が飛び交っている。それを青峰は横目で見て、どこか懐かしそうな眼をした。バスケが嫌いになったわけではないから練習がしたくないわけではない、青峰はバスケは未だに好きだった。「やっぱ予定変更、ストバス行って1on1するぞ」と青峰は黄瀬に笑って声をかけた、黄瀬は反論することなく頷く。
黒子っちは、多分こうやってときたま見せる中学時代の青峰っちだけが好きなんだろうな。と黄瀬は思った。自分も今、青峰が見せたような笑みが好きだったが、別に今の青峰が嫌いではない。だから、青峰と戦わないで、隣にいると決めた。

「王子様に黒子っちはなるんッスかね」

なにか言ったか、と青峰は横を向いて黄瀬の方を見た。ふふ、っと笑って、なんでもないッスよ、と黄瀬は否定して青峰に一瞬だけキスをした。
自分たちだけが世界の中心なら、青峰っちは俺の勇者で俺はその仲間で恋人。だけど、世界の中心が黒子っちだったら、青峰は魔王で俺はその手下で恋人、黒子っちは勇者。どちらが正しいかはわからないけれど、どんな青峰でも愛してるからどちらでもいい。「傍にいてくれたらそれだけでいいッスよね」と黄瀬がキスしたあとに呟けば「話の脈絡ねえぞ」と言って、青峰は笑ってからまた前を向いて歩き始める。黄瀬もその隣にならんで歩いた。

世界を救う気はないか
title by ごめんねママ
リクエスト:迷子さん(黄青)
念願の黄青をかけて満足です
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