テキスト | ナノ
※ク/マ/と/イ/ン/テ/リという漫画に収められている話のパロ
※紫原がケーキ屋の息子でこれの続き



目を開けたら目が痛かった、泣いたからだろう痛いのに加えて熱い。きっと顔は酷い見難いはずだ。氷室は瞼の上に自分の掌を当てて、熱を冷やそうとするが上手くいかない。
その様子を目を擦っているいるのかと勘違いしたのか、先に起きていた紫原が「ダメだよ、もっと赤くなる」と言って、その大きな手で氷室の腕をつかんで止めさせた。「擦ってないよ、熱いから冷やそうと思って」そういえば、紫原はすっと腕を引いた。

「何か食べる?」
「ケーキ、アツシの家のケーキが一番好きだ」

そういえば、「朝からケーキは重たいよ」と言ったけれど紫原は立ち上がってキッチンに消えたかと思えば、白い皿を二つ持ってからすぐに戻ってきた。お揃いの白い皿を、氷室に紫原は手渡した。冷蔵庫に入っていたのかケーキはひんやりとした温度が陶器越しに伝わる。
白い綺麗なクリームに、より取り見取りのフルーツが惜しみもなく使われたケーキ、見たことないものだと思いながらもフォークで一口分掬ってから口に含め、やはり食べたことない味だった。「これ、新作?」と言えば、紫原は「うん、昨日で来たばかりの新作だって、父さんが持ってきてくれた」と言ってから、自分もフォークで一口分掬い上げてから口の中に含んだ。

「アツシのお父さんが?」
「うん、そー。俺が、室ちんがウチのケーキ好きだって昔言ってたの覚えていてくれたみたい」

一昨日、紫原の家に挨拶に行った。彼の両親は戸惑っていた、もうダメかと思った。美味しかったケーキの味が、口の中にまだ残っている。もっと一口目を味わえばよかった、感謝すればよかった、なんて後悔まで生まれる。思わず、目と口を皿を持っていない手で覆った。
「泣くほど美味しかった?」そう言いながら紫原は、氷室の手を退けさせた。氷室の目には水分が多かった、潤んで黒い瞳が揺らぐ。


バニラと視線とビスケット
title by ごめんねママ
このパロが書きたいがために前作を書いた
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