テキスト | ナノ
※氷室3年・紫原2年
※wcで敗退した話:捏造


汗と一緒に色々と流れているような気がするけれど、疲労とかでよくわからないからいろいろな物ごと紫原は顔をタオルで拭った。一年前に同じ場所で負けて、バスケ辞めるって言ったけどなんだかんだで続けてしまっていた。横にいる氷室を紫原は見たけれど、今年は泣いてはいなかった。今回が最後の大会なのに凄いなと思って、紫原は大きな手を伸ばしてから氷室の頭をいつもじぶんが撫でられるようにゆっくりと撫でた。驚いたようで氷室は一瞬身体を硬直させたが、紫原の方を向いて笑った。

「お疲れ、室ちん」
「まさかアツシに言われるなんてな」

ありがとう、そう言ういう声はなんだか頼り無さげである。ポーカーフェイスだから表情には出さないだろうけれど、やっぱり堪えるであろうことは紫原にでもわかる。最後の大会だったから、負けて悔しいと思わないわけがない、去年の大会でさえも泣いていてのに。
彼を優勝させてあげたかった。紫原はごめんねとだけぼそりと謝る。氷室はそれを聞いて苦笑しながら自分の頭を撫でていた紫原の手を取ってから、優しく労わるようにそっと触れた。なんで謝るんだ、アツシは頑張ってくれたよ。そう言って氷室は笑った。
優勝できなくて申し訳ないとか勝たせてあげられなかった悔しさとかそれでもやっぱり室ちんは綺麗だとか、一瞬のうちにそんなことを思って紫原は氷室を思わず抱きしめていた。

「あのね、聞いて」
「うん、聞く」
「本当はさー優勝トロフィーと一緒にあげたい言葉だったんだけど」

結婚しよう、そういう時に紫原は一層氷室を強く抱きしめた。抱き返すように氷室は腕を紫原の背に回した。大きな紫原の背中を包み込むように精一杯腕を伸ばした。
「なんで今言うんだよ」と氷室は苦笑しながらそう言った。それから「しようか」とだけ短く返した。今までありがと、室ちんがいたからバスケ楽しくなった、それから卒業とかお別れとか超嫌だし、離れたくない、あとやっぱりトロフィーを室ちんにあげたかったなぁ、と紫原はそう言って氷室から身体を放した。

「その言葉を聞けただけで俺は幸せだよ」
「どの言葉」
「全部だよ、今の言葉」

両手で目を隠すように覆ってから、あーあ折角泣くの我慢してたのにアツシのせいで泣きそうだ、と氷室は言った。隠しきれていない口元は笑っている。紫原はまた氷室を、覆い被さるように抱きしめた。一回り大きな紫原の腕のなかに氷室はすっぽりと収まる。「泣いても良いよ、俺しか見てないから」そう言って、また、ごめんねありがとう愛してる、と言って氷室の頭を優しく撫でた。黒く綺麗な髪の毛が眼下で小さく震えていた。



いつになく機嫌よく 揺れるうなじ
title by ごめんねママ
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