テキスト | ナノ
※大学生捏造



部屋中のクローゼットや引き出しや箱やポーチを黄瀬は開けて回った。そして、その中を荷物をかき分けて底や奥まで見る。だけどあるのは服やメイク道具や雑誌などで、探しているものは見つからず、黄瀬は涙目になった。目が霞むが、それでも部屋のらゆるところを探す。お気に入りの指輪を無くした、いつもの箱にこの前使ったあとにちゃんと戻したはずだった。それなのに、今日つけようと思ったら無くなっていた、この部屋のどこかにあるはず。
部屋のインターフォンが鳴る。黄瀬は慌てて、散らかった部屋をある程度片づけて「今行くッス」と声をかけてから、玄関に向かった。

「黄瀬さん、ドアを開ける前はちゃんと誰か確認してから開けるようにと何度言えば」
「ごめん、黒子っち」

いつもの通りにドアが勢いよく開けられるかと思ったが、今日はゆっくりとドアが開けられる。どうかしたのかと思って黒子は黄瀬を見るが、俯いたままで謝られて何が何だかわからずに「どうしたんですか?」と声をかける。下を見て俯いたまま「指輪、なくしちゃったッス」と掻き消えそうなくらいの震える小さな声で黄瀬は黒子に告げた。彼女の小さな手はぎゅうっと力を入れられて握りしめられていた。黒子は優しく微笑みながら、部屋に入りましょうか、と声をかけて玄関から動かない黄瀬の背中に手を添えて優しく押して誘導した。

「これは、」
「指輪、探してたからちょっと部屋汚いけど、気にしないで」

泥棒が入ったのではないかと思えるくらいに部屋が荒れていて、部屋中を探し回ったことが黒子にも容易に伝わった。黄瀬はそんな部屋を相変わらず下を向いたまま片づけ始める。黒子も手伝えることをしようと、床に落ちている雑誌を拾い集める。
ごめんね、黒子っち。片づけをしながら黄瀬はもう一度黒子に言った。指輪は高価なものではない、中学生だった時にかったものだから万単位のものではなかったが、黄瀬はそれをいつも大切にしていて会うときにはいつも身に着けていた。
黒子は溜息を吐いて「黄瀬さん、ちょっと落ち着きましょう」と声をかけて、ソファーに腰掛け、黄瀬の手を引いて横に座るように促した。黄瀬は指輪を無くしたことで負い目があるのか、一瞬だけ躊躇ったが横に腰掛ける。

「実は、指輪は僕が持ってます。まさか、こんなに大切にしていてくれるとは思ってませんでした」
「なんで、指輪?」
「ちゃんとしたのを渡したくて。けど、サイズが分からなかったので秘密でお借りしました」

まずはこちらをお返しします、と黒子がそう言ってポケットから指輪を取り出して、黄瀬の掌にのせると黄瀬はようやく顔を上げて笑った。その様子を見て、黒子は苦笑しながらも、もう一つをポケットから取り出した。「さすがに大学生にもなって、恋人への指輪が安物なのは気が引けるので。受け取ってくれますか」そう黒子が言って、小さな黒い箱を手渡した。箱を開けると、中にはシンプルだが中心にリボンの形が乗っているかわいらしい指輪が入っていた。黒子はそれを手に取って、黄瀬の左手を取って薬指に嵌める。

「今度はこちらも大切にしていただけたら嬉しいです」

そういって、泣いている黄瀬の涙を黒子は指先で拭い取った。


いつまでもあなたのものでいいです
title by 花畑心中
りゅんさんリクエスト:黒黄♀
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