テキスト | ナノ
青峰の骨ばって固い皮膚の指先が、黄瀬の頬を包み込んでそれから多少強引に引き寄せられ、唇を奪われる。キスが終わった後に目を開いて青峰を黄瀬が見れば、青峰は満足そうに笑い、白い歯を見せた。
黄瀬は細い腕を青峰の腰に絡めて抱きついた。鍛えられた身体は服越しにも分かった。シーツに包まりながら、黄瀬は青峰にさらに深く抱きつく。青峰の心音が鼓膜に届いた、低い音が同じ間隔を開けてから繰り返し。

「幸せすぎて今死にたい」
「幸せなのになんで死にたいんだよ?」

独り言のはずだったが、青峰にも聞こえていたのか覗き込むようにして黄瀬を見ながら青峰は聞いてきた。「だって、私だって歳をとるんッスよ、皺だらけのお婆ちゃんになった私を青峰っち好きでいてくれないッスもん」黄瀬は自分の頬に手を添えた。押せば抵抗を示す若々しく瑞々しい肌、それもあと数十年したら垂れてきて皺だらけ。私としては今死ねないなら40歳くらいで死にたいッス、と苦笑しながら黄瀬はそう言った。

「黄瀬が40で死ぬんだったら、あとの俺は暇だな」

青峰はなんでもないように言って、本当になんでもないような表情で、声色だった。ただ、馬鹿みたいに黄瀬の頭を撫でまわした、そのせいでせっかくセットしていた黄瀬の髪型が原型もなく崩れた。
馬鹿だから、本当に何も考えていない、深い意味もない。そうわかっていても、黄瀬は嬉しくて頬を緩ませた。それから、解いていた腕をまた青峰に絡ませて抱きついた。
抱きついてきた黄瀬を抱き返すようにして、お前が婆になっても傍にいるから、そう青峰は黄瀬を抱きしめながら言った。

「嘘だ、青峰っち若い子の方が好きッスよ、絶対」
「んなこと言っても、俺だって爺になるから限界があんだよ」
「それもそうッスね、私が婆になってたら青峰っちも爺だ」

黄瀬が老いを心配するように、青峰だって老いを恐れる。いつまでバスケをしていられるだろうか、バスケができなくなった自分を彼女はまだ好きでいてくれるのか、言葉に出さないだけで不安はある。
「俺が爺になっても、傍にいろよ」抱きしめて、耳元で小さな声で青峰は黄瀬に言った。黄瀬は無言で頷いて、青峰から離れると掌と指を丸めて、小指だけを青峰に向けて差し出した。指きり、とだけ黄瀬が言えば、青峰も小指を差し出した。

「指切りとかいつぶりだよ、マジ」
「私も最近全然してなかったッス」
「なんか、恥ずい」

なんだかんだ文句みたいなことを言いながらも置くように指を二本、交わらせる。青峰の黒くて長い指が黄瀬の白く細い指に絡まった。嘘ついたら針千本のーます、指切った。棒読みの声で青峰が歌い始めて、黄瀬もそれに加わった。


ぼくらは小指で会話する
title by ごめんねママ
匿名さんリクエスト:青黄♀
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