テキスト | ナノ
※若干捏造



手渡されたのは緑と黒とオレンジの3色で編みこまれたミサンガだった。編みこんでいる網目は細かく、一種の刺繍を見ているみたいな、それほどまでに細やかな編み目。3色で複雑な模様を構成している。
「これ、真ちゃんにあげる」と言って、高尾は笑いながら緑間の大きな掌に、細い一本の紐を置いた。「昨日、久々に作ったら思いのほか上手くできてさー」と付け足すように高尾は言う。しかし、緑間は高尾につき返した。

「必要ない」
「これも人事を尽くすと思ってさっ」

別に無理して付けろとか言わねーよ、形だけでも良いから受け取って。元々すんなりと受け取ってもらえるとは高尾は思ってなかったので、少し強引に高尾は受け取ったミサンガを、そういって再び緑間に押し付けた。
手の中に再び戻ってきたミサンガを、緑間は人差し指と親指で摘みあげて更によく観察した。風で少し揺れるミサンガは、どことなく異国の雰囲気を彷彿とさせる。

「これ、高尾が作ったのか?」
「そうそう、妹と一緒に作ったらハマってさ、結構上手いんだぜ。ちなみに、俺とお揃いでーす」

高尾はそういって、自分の鞄を引き寄せて緑間に見えやすいようにした。高尾が指さした鞄には、カラフルな色のミサンガが数本結びつけられている。赤、青、白、黄、黒、オレンジ、水色、しかもその色の彩度や明度、濃淡を代えた色もあった。そんな色たちの組み合わせを様々なバリエーションで、様々な模様で、太さでどの色も殺すことなく綺麗に編みこんである。
その中の一本を緑間はつまみながら「うまいものだな」と言えば、高尾は嬉しそうに「どんなのがご注文があれば、作ってくるけど」と言った。別に今貰ったものがあるので緑間は首を横に振った。また、それが切れたら作ってやるから、と高尾も笑って鞄のミサンガをいじった。

「随分と昔から付けているようだな、汚れたやつが多いぞ」
「中学の時のを付け替えたからな。昔はことあるごとに作ってたし」

体育祭、文化祭、バスケットボールの大会、先輩へ、後輩へ、好きな子へあげるため、受験、自分のために。一つ一つに色々とお願いをしながら、作りなれていない初めは時間をかけながら作った。一番初めに作った一本を高尾は懐かしく思いながらミサンガの中から探し出して、触れた。網目もあらく、ただ三つ編みをしただけな単調な柄。確か、中学時代に初めて大会に出れた時のものだよな、と思い出した。

「思い出せば、一つ一つ願いごとしながら編みこんでんの。恋愛だったら赤とかピンク、バスケだったら黄色系、勉強は緑とか青だったり、自分でルール決めてた」
「これは、だったら何を願ったんだ」

緑間は自分の贈ってきたものと同じ、真新しいミサンガを示しながら高尾に聞いた。「真ちゃんのお願いが叶うように」と高尾は恥ずかしげもなく、言って笑っていた。緑色は緑間を表してんだよ、あとオレンジはユニフォームの色、その二色に合う黒は俺。そう説明すると緑間は呆れながら「分かり易すぎるのだよ」と言って、手の中のミサンガを眺めた。




そのひとのゆびはまるで魔法みたいだった
title byごめんねママ
15万打リクエスト:匿名さん/高緑の日
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