テキスト | ナノ
今日も見てしまった。黒子は思わず目をそらしたが、またその光景を目に入れた。体育館の入り口、人が通るのも恐れないで告白する女の子、相手は青峰だ。黒く長い髪の、こちら側からは顔は伺えなかったが、きっと綺麗な人だと黒子は思った。「わりぃ」
と青峰の声が、結構距離があるはずなのに何故か黒子には鮮明に聞こえた。女の子が何か差しだしているが、青峰は首を振ってから押し返していた。その表情はめんどくさそうで、早く終わって欲しいということを隠そうともしていない。

「好きな子、いるの?」
「居る、だから無理だ」

何回か聞いたことのある質疑応答が、また聞こえた。嘘か本当か確かめたこと無い、もしかしたら告白を早く終わらせるために言っているだけかもしれない、けど青峰が好きな子がいるの、と聞かれて、いる、と言っているだけで黒子は何とも形容しがたい薄暗い気持ちに陥る。
手に持ったバスケットシューズを床に置いた。シューズに足を入れて、靴ひもを丁寧に結ぶ。早くこの場を立ち去らなければと思ったが、すでに遅かった。足音の後に「テツ」と背後から声が聞こえた。

「青峰くん、どうしたんですか」
「別に、テツが見えたから」
「そうですか。早く行かないと、赤司くんに怒られますね」

告白されたことを少しも意識してない様子で、それでいて話にも出さないのは告白してきた子に本当に興味がないからなんだろうか、それともただ単に気を遣っているのか知られたくないのか。考えてみたけれど、黒子にはどれが正解なのかは見当も付かない。
何も行動せずに後悔するな、と言えるのは女の子だけ。言ってしまったら僕らの関係は終わり、知らないふりもできない、一緒にプレーもできない、出来ないことだらけのマイナスだらけ。
既に体育館では練習が始まっていて、ボールが跳ねる音が響いていた。青峰はすぐに参加しようと走り出したが、黒子は入口で立ちつくしている。

「テツ、顔色悪いけど大丈夫か。気分悪いなら、赤司に言って別メニューにしてもらえよ」
「大丈夫です、ちょっと考え事してただけです」

そう言って、慌てて黒子も青峰の後ろに付いていく。心配してもらえて、側にいられて、あとにこれ以上何を望めばいいのか黒子には分からない。こうして一緒にいられるだけ先程の女の子よりは彼に近い、だけど凄く遠い気がする。テツ、一緒にパス練しよーぜ。そう言ってボールを投げて渡してくる、青峰の笑顔はそれは友情だからで、それに別の意味を期待して思いを告げて返ってくるのは、あの子の時と同じはずだ。

不毛だ、ずっとずっと不毛だ、それこそきみに恋なんかしてしまった日からずっと
title by ごめんねママ
少女漫画みたい
麻蓮さんリクエスト/青黒
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