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※陽泉は寮だという設定


キャプテンからの呼び出しを、めんどくさがりながらも紫原は氷室に伝えに行った。学年が違うから少し紫原の部屋からは遠い所にあった。目の前に氷室の部屋のドアが見えるくらい近くになって、メールで呼び出せば良かったじゃん、と気付いたがもうすぐそこまで来てしまったから、そのまま口頭で伝えることにする。
コンコン、のノックした後に「室ちん、いるー?」と声を掛ければ「入って」とドアの奥から声が聞こえる。ドアノブを推して中にはいると、少しだけ変な匂いがして紫原は顔をしかめる。

「何コレ、臭いんだけど」
「ああ、ごめん。これを塗っていたんだ」

氷室は床に座っていた。床に座ったまま、匂いの原因であるそれを摘み上げて、紫原に見せる。小さな透明のビンに、同じく透明の液体が入っている。ひょいっと紫原は氷室の手からそれを奪いあげて、鼻を近づけてみると部屋に漂う匂いと同じ匂いがした、つーんっとしたちょっとした刺激臭。

「マニキュア?」
「惜しいな、トップコート。爪の保護にたまに塗るんだ」

そう言って、氷室は左手を紫原に見せた。氷室の親指以外は既に塗られているのか、形の良い爪が光っている。「おいしそう」と思わず言った紫原に「残念、これは食べられないよ」と言って、再び紫原の手から自分の手元にトップコートの器を取り戻した。氷室は、一度器の中に付け直して、残った親指を塗った。3度に分けて、右側、左側、真ん中、ゆっくりと塗っていく。それを紫原は近くに座って眺めた。なんだか室ちんの居るところだけスローペースで時間が違う気がする、そう思うくらいになんだか様に鳴っていた。見ている間に、塗る手は右手に変わっている。聞き手ではない左手で塗っているのに、その動作は右手と同じくらいに滑らかだ。

「アツシにも塗ってあげようか」
「別にいい」

ぶっきらぼうに言ってしまったが氷室は気にすることなく「そっか、わかった」と言って、トップコートのビンの蓋をきっちりと閉めてからテーブルに置いた。その動作の1つ1つがいつもより綺麗な気がする、おそらく爪が綺麗だからか。
氷室の手を取ってから、間近で見た。薄い透明な膜が、薄い桃色の爪の上を綺麗に覆っていた。

「なんかさー、今の室ちんエロい」
「なんで?」
「分かんないけど、多分爪のせい。美味しそう」

指を銜えられそうになって、慌てて氷室は手を引いた。不思議そうに見つめてくる紫原に「まだ乾いてないから、舐めたら苦いし身体にも悪いんだ」と言って説明する。それでも諦めきれないのか、手を指だけを触らずに他の部分に触れたり舐めたり紫原はした。
食べられてしまいそうだ、となんとなく氷室は思った。まだダメ?と滅多に見ることが出来ない上目遣いで紫原に聞かれる。時計を見れば10分は経過しているから、右手だけなら大丈夫だろうと思って、良いよ、と言えば直ぐにぱくりと指を口の中に含まれる。指先が一気に熱を帯びた。
「やっぱり、美味しくない」と少しの間して紫原はそう言った。その不満そうな表情に氷室は思わず笑ってしまった。



からだによくない
title by ごめんねママ
レイさんリクエスト:氷紫
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