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これの5年後で8月30日の話
情事後注意



ベッドの中で猫背気味の体制で横になっている黄瀬の背中を、先に目が覚めた青峰は眺めた。色素の薄い肌に、背骨がうっすらと盛り上がっている。所々赤い小さな痣が有るのは昨日、青峰自身で黄瀬に付けた物。後ろ姿だけでも様になっていて、出会った頃から何一つ変わらなく年を取ったことを感じさせない。
青峰はそっと手を伸ばして、丸まった黄瀬の背中に指を這わせ背骨を上から下へとなぞっていく。黄瀬は初めはくすぐったそうに身を軽く捩ったが、最後の方では目が覚めたのか寝返りを打って青峰の方を見た。

「何ッスか?」
「あー、別に意味はねぇよ」

そう言えば、黄瀬は腕を伸ばして青峰の首に巻き付かせると、青峰を引き寄せてキスをした。「折角良い夢見てたのに、そんなことで起こさないで下さいッスよ」と言っているが、黄瀬の表情は朗らかで明るい。
黄瀬が動くと、皺だらけになってしまったシーツの間から、かいま見える足はとても妖艶で昨日の出来事を思い出させる。青峰は黄瀬の上に身体を移動させ、上からキスをして黄瀬の身体をまさぐった。

「今日は仕事有るからもう付き合え無いッス。帰ってから」
「っち」

その気になってしまったら遅いので、慌てて黄瀬は青峰の額に手をついて押し返す。途端に不機嫌な表情になり、舌打ちまでしてしまった青峰のご機嫌を取るようにもう一度機嫌を取るように黄瀬はキスをしてから、ベッドから抜け出した。床に投げ捨てられた衣服を拾い上げながら、バスルームに向かって歩いていく。

「そう言えば、明日青峰っち誕生日ッスよね。何か欲しいもんある?今日仕事早く終わるみたいで帰りに買ってこようかと思ってるんスけど」

バスルームの扉に手を掛けながら黄瀬はふり返って青峰を見て、そう言った。ふり返った勢いで金の髪が靡いて、長くなった髪の下から耳が覗いた。相変わらず青いピアスが1つだけ黄瀬の耳には存在している。
あと1日で青峰の誕生日。何だかんだ言いながらも、毎年お互いにプレゼントというものを上げたことはない。欲しい物はあらから揃っているので、特別にこれが欲しいからだ。それでも一応毎年聞いてみる、今年も何もないと言われると思っていたが「ピアス」と青峰は言って、黄瀬方へ歩いてきて後ろから抱きついた。

「ピアスっすか?別に良いッスけど、どんなのが良いとかリクエストとか」
「違う、お前のもう一個のピアス」

そう言いながら、青峰は黄瀬の長くなった髪の下から手を少し入れて青いピアスに触れた。「昔外すなって言ったけど、お前これ以外のピアスつけねぇよな。何で?」と青峰に言われて黄瀬は「もともとピアス開ける予定じゃなかったッスから、もうこれ以上は開けなくても良いんッスよ」と黄瀬は笑って、青峰に背中を預けて寄りかかる。

「昔、付き合う前に青峰っちの誕生日の時にこのピアス買ったんスよ。だけど、野郎からピアスなんてプレゼント貰っても嬉しくないだろうな、って思って思い切って自分で開けたわけッス」
「だから、俺の誕生日前にピアス開けたのか」

青峰は触れていた青いピアスを見つめた。このピアスにそんな訳があるとは知らなかった。
黄瀬は青峰の手に自分の手を重ねると、ゆっくりとピアスから青峰の手を放させてから向き合った。「もう一個、取ってあるけど本当にそれで良いんスか?」と確認して、青峰が頷いたのを見てから黄瀬は持っていた衣服を床に落とすとクローゼットに向かって歩いていって、何かを持って戻ってきた。
まさか5年以上も経ってから渡すことになるとは思ってなかったッス。黄瀬はそう言ってどこか照れくさそうに、青峰にピアスの入っているであろう白い箱を手渡した。



片割れピアスとあの子の涙
title by 花畑心中
青峰誕生日テキスト/何年か越しとか泣くしかない
依鈴さんリクエスト/青黄
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