テキスト | ナノ
※色々と捏造


汗まみれになって肌に張り付くTシャツを指で摘んで前後に動かして、高尾は体に風を送った。。ただでさえ熱い体育館は夏になると更に熱が篭もる。それは夜になっても余り変わりなく、多少温度は下がるものの熱いことに代わりはない。
タオルで胸元や首筋に付いている汗を拭いながら、床に座り込んでペットボトルの飲料水を口に含んで、体の中に流し込んだ。高尾は座った体制のまま、緑間がシュートを入れるのを眺めた。高いループを描きながらゴールポストに一直線に落ちていく。ボールが入っていた籠が空になるまで打った後にようやく緑間も休憩に入ろうと、高尾の方に歩いてくる。「お疲れ」と言うと「ああ」とだけ緑間は返答して、高尾が差し出したタオルとペットボトルを受け取った。

「真ちゃんのシュートは昔もだけど綺麗だな」
「昔といってもまだ1年しか居ないのだよ」
「あーそうじゃなくて、俺昔かっら真ちゃんのこと知ってたから」

中学の時に緑間達、キセキの世代の試合を幾度か見たことがあった。圧倒的な存在感に畏怖も憧れも抱いた。「だけど、真ちゃんがシュートを打つときが一番綺麗だった」今と変わらないで精密機械のように、高い弧を描きリングにかすることもなくゴールポストの間を落果していくボール。あれを初めて見たのは中学2年だったのを、高尾は思い出した。夏の大会で、今と同じ蒸し返した体育館の中で行われていた。

「だけど、まさか高校が一緒だとは思わなくてさー、おっどろいたっての」

笑いながら高尾は緑間の背中を軽く叩いた。緑間は「痛いのだよ」とだけ言って、高尾を睨み付ける。だけど、すぐに目を前に戻した。
先輩達も帰ってしまって2人以外には体育館にいない、足音もボールが跳ねる音も、話し声もなくて、静かだ。目の前にはいくつものボールが転がっている。緑間はそれを見つめたまま黙って前を向いたままで「なんか話してよ、真ちゃん」と高尾は緑間に触れていた手を体を支えるように床についた。床はひんやりとしていて、空気よりも冷たかった。

「俺はお前を知らなかった」
「別に帝光とは一度しか試合したこと無いから別に知らないのがフツーだって、負けたし」
「そうかもしれないが、俺だけ知らなかったというのも癪なのだよ」

中学三年間、同じようにボールを追いかけていた。どこかですれ違っていたかも知れない。思い出そうと昔の記憶を遡った。
そうやって思考を今から昔へと遡っていたときに、ふと高尾が肩に数回触れてきた。なんだろうか、と首を横に動かせば緑間は頬に何かが軽く刺さるのを感じた。それは高尾の人指し指で、高尾は馬鹿みたいに笑っていた。引っかかった、と笑っている馬鹿の人指し指を払いのけて緑間はまた前を向いた。
「あ、そうだ、なぁ真ちゃん」と今度は高尾は声を掛けた。不機嫌そうに、少し警戒するように、緑間は横を向いた。

「俺、真ちゃんに一目惚れしたっていったけどアレ、嘘。ほんとは、中学の頃からずっと好きだった」

そういって抱きついてくる高尾を、緑間は「暑いから離れろ」と言って引き離そうとしたが、それだけ言って後は緑間は高尾の好きなようにさせた。近づけば微かに匂う汗のにおいは、中学時代の仲間と同じようで違っていた。


これは優しさを象った夏の欠片
title by 花畑心中
キセキは有名だから、一方的に知っているのもアリだよね
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -