テキスト | ナノ
委員会が遅くなって、少しだけ部活に行くのが遅くなった。キャプテンだから、といって遅刻に遅刻することが許されているわけではないので、少し早足に部室に赤司は入った。奥にあるのが部室だとは思えないくらいに綺麗な扉を開ければ、紫原がベンチに座ったまま靴ひもを結んでいる。扉を開けた音で赤司の存在を認知して、紫原は首を上げて赤司を見た。

「あ、赤ちん。赤ちんも委員会で遅れたの?」
「ああそうだよ、思った以上に長引いてね」

そう言いながら赤司は鞄をベンチに置き、鞄を開けてから着替え取り出した。すでに紫原は着替え終わっていて、すぐに部活に参加できたが立ち上がらずベンチに座ったまま赤司の着替えを見ている。
ボタンを外して堅苦しい制服のシャツを脱ぎ、赤いTシャツに袖を通した。流れるような一連の動作はいつも見ていることだけれど、紫原はそれを凝視していた。「どうしたんだ、紫原」と赤司も奇妙に思って声を掛けた。
いつも彼は俺の前にいる。歩くときも、バスケの時も、いつも。そして、彼の髪は短い、俺と違ってとても。なので、首筋がよく見える、それはとても細く美しい、襲ってくれと言わんばかりに。

「離れるんだ。言うことを聞かない駄犬は嫌いだよ」

気が付いたら、紫原は立ち上がって赤司を壁に追いつめて逃げれなくしてから、彼の首筋に歯を立てていた。我を取り戻してから赤司の首筋を見れば、白い肌に赤い点線の輪がくっきりとついている。
下を見れば、赤司は紫原のことを見ていた。その目は睨んでいるようにつり上げっているのでもなく、泣きそうに垂れ下がっているのでもなく、ただ見ているだけの目。もしかして、これは俺を試している、と紫原は直感的に目を見て思った。
「残念だけどねー赤ちん、俺は犬じゃなくて人だから」そう紫原が勝ち誇ったように言えば、赤司はふぅっと溜息を吐いて薄く笑みを浮かべた。「悪かった、そうだな紫原は人だ」そう言った直後に、赤司は犬を頭を撫でるように紫原の頭に手を置いて撫でた。撫でられるせいで、紫原の長い髪がゆっくりと揺れている。

「だーかーらー、俺は犬じゃないって言ってるのに」
「分かってるよ。だけど、その話は後にしよう、もう部活が始まっていることを忘れるな」

紫原の腕の中から抜け出ると、赤司は屈み込みバッシュを持ち上げた。「さぁ、行くぞ」と赤司はふり返って紫原に声を掛ける。だから、犬じゃないって。そう心の中で呟いて紫原は赤司の後を追いかけた。






はい、おしまい、ぱちん
title by ごめんねママ
紫赤のイメージってこんなです
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