テキスト | ナノ
※20代くらいで同棲してる設定



玄関の扉が開いたかと思うと、あわただしい足音がして黄瀬が部屋に入ってくる。無言で歩み寄ってくると「青峰っち」と言って抱きついてくることは、もはやいつものこととなりかけていて、青峰はため息を軽く吐きながら黄瀬の頭を軽く撫でた。青峰は読みかけの雑誌をテーブルの上に置いて、黄瀬をソファーの隣に座るように腕を引いて誘導する。ソファーに座ると黄瀬は、頭を体ごと青峰に寄りかけて体の力を抜いた。

「疲れた」
「お疲れ」
「もう、モデルやめたいッス。どうせ俺なんてちやほやされるのは今のうちだけで、歳を取ったらすぐにみんな俺のことなんて忘れるんッスよ。近寄ってくるのは顔だけしか見てくれないやつばっかだし、疲れた」

早口に捲し立てて、両の手で黄瀬は自分の両目を覆った。真っ黒な世界が視界に広がる。何も見えない世界だったが、方に何かが触れて少しだけ重くなった。青峰が肩に手を回し抱き寄せていた。
「お前は綺麗だよ」耳元で低く囁く青峰の声が、鼓膜を震わせる。弱っているのは本当だけれど、少しだけ脚色。自分が弱ると彼は優しくしてくれる、それが狙い。いつか俺はおっさんになって美しさも可愛げもなくなるから、本当に彼が離れていく前に愛がもっともっと欲しいのです。

「本当に、綺麗ッスか?」
「マジだって」
「証明して欲しい」

そうお強請りするように青峰を見つめて、すり寄って黄瀬は青峰の首に手を回した。「どうやって」と聞けば、黄瀬は「キスして、抱きしめて欲しいッス」と目を伏せながら言った。長い睫毛が揺れている。めんどくさいやつだ、と幾度も思うが突き放せないのはどうしてなのか自分でも理解できない。黄瀬の頭に手を添えて引き寄せて、キスをする。
キスが終わると黄瀬は自分から青峰に抱きついた。好きッス、と青峰の胸元に顔を埋めながらそう言う。




恋のよろこびを、ふしあわせを
title by ごめんねママ

優花さんリクエストで青黄
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