テキスト | ナノ
※大学生くらい


青峰が踏み込んで、力強く飛ぶ。彼の手からボールが離れて、弧を描いてバスケットリングに堕ちていく。何回見ても、その光景は美しいと思う、負けたけれど彼のシュートを見れてよかったと思えるから不思議だ。
「おっし、しゅうりょー」と着地をした青峰は、満足げに笑って自分で放ったボールを拾い上げた。「もう一度、1on1!」と黄瀬が提案するけど「明日だ、明日。今日は流石に疲れた」と笑って、青峰は床においていたタオルを拾って歩き始める。慌てて黄瀬もタオルとペットボトルを持つと後を追いかけた。中学から一度も勝てずに、正直今はモデルとかの方が本業になってきていて彼に勝つことは諦めているが、それでも1on1は暇さえあればしたい。

「げ、もう真っ暗ッスね」
「お前が1on1に何回も付き合わせるからだろ」

体育館を出れば空はすっかり日が暮れていて、暗くなった空間に蛍光灯の電気がついている。携帯を見れば時間は8時を過ぎていて、暗くなるのは当然だった。青峰も携帯を出して時間を確かめたかと思ったら、メールの着信音が鳴った。青峰は携帯をめんどくさそうに操作して「わり、先帰るわ」と、だけ言って黄瀬を置いて走っていこうとする。暗い道に一人置いていかれることが最近多くなった気がする。この前もメールが来て、彼は自分を置いて先に帰ってしまった。
「彼女ッスか」と自分で呟いておいて、黄瀬は泣きそうになった。何も青峰に彼女が出来ていることがおかしいことではない、むしろ当たり前だ。バスケが上手く、かっこいいし、性格も良い。男である自分が好きになるくらいだから、彼女の一人二人居ても不思議なことじゃない。

「おい、黄瀬」
「え、何スか」
「何で泣きそうな顔してんだよ」

不細工な顔だなぁ、と青峰はちゃかすように苦笑した。はは、っと空笑いをして黄瀬も笑ったけれど、自分で笑えている自信は無かった。

「で、何で泣きそうなんだよ」
「・・・青峰っち、彼女できたんッスか?」

だったら、さっさと振ってくれ。青峰の顔を見ることが出来ず、黄瀬は自分の爪先を見ながらそう小さく言った。なんと女々しい、言ってしまった後でそう思ったが言ってしまった物は仕方がない。
青峰は黄瀬は下を向いていたので表情は分からなかったが、暫く唸っていたが「あー、馬鹿らしい」とだけ言って、黄瀬の頭に手を置いてわしゃわしゃと頭を撫でた。アホが、と言って笑う声が頭上から聞こえて、黄瀬は馬鹿にされているようにしか思えずカッなって顔を上げた。

「んだよ、お前、俺が浮気とかしてるのかと思ってたわけ。馬鹿か」

上げた顔を引き寄せられてキスをされる。また、自分とは別の匂いがする、甘い匂い。「浮気なんかするかよ」そう青峰は黄瀬に言ったけれど、メールの相手が誰なのかは言わない。だけど、もう良いかな、っと思った、考えることは得意ではない。黄瀬は青峰がそういうのならばそれを信じるしか出来ないかった。近くの蛍光灯が壊れているのか点滅している、眩しくて思わず黄瀬は視線を逸らす。










ずっと呼吸が浅いような気分
title by ごめんねママ


偏頭痛さんリクエスト
本当はハッピーエンドのリクエストだったんですけど、もやが残るオチになってしまった
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