テキスト | ナノ
※帝光時代捏造



みんなの目を盗んでから部活をサボった。いつものことで、後ろめたさなど微塵もない。ウォークマンと菓子と雑誌を持って屋上へ向って、そして寝転がった。コンクリートはひんやりとしていて堅くそして冷たく、寝ることには適してはいなかったが、青峰はそんなこと気にする様子もなく床に寝そべる。
体育館からそこまで離れていないのでバスケットボールが床をたたき付ける低い音が無数に連続して聞こえる。そんな音をかき消すように、ウォークマンの音量を上げて持ってきていた雑誌を開いた。

「何やってるんスか」
「あぁ、黄瀬かよ」

視界の上に現れた金髪が光に反射して綺麗だと思った。
黄瀬の頭を左手で押しのけて、寝かせていた上半身を上げてコンクリートの上に座り直す。声が聞き取りにくいだろうから、がんがんと耳元で五月蠅かったイヤホンを耳から取り除く。一瞬で音楽が世界から消えて、バスケットボールが地面を叩く音が再開された。
はにかみながら「別に用事は無いんスけど、たまには青峰ッちをまねしてサボろうかと」と言って、隣に黄瀬も腰掛けた。
黄瀬は部活をしろ、練習しろとは一言も言わなかった。ただいつも後ろを付いてきていた。犬みたいに尾っぽを振って追いかけてくるそんなイメージで、ワンオンワンの時、言い換えればバスケ以外でも付いてくる。
落ちていてイヤホンを手にとって、黄瀬は耳元に近づけた。「青峰ッちってこんなやつ聞くんっスね」と言って、そのまま耳にイヤホンを耳にはめ込む。彼の好きな音楽が鼓膜を伝って入ってくるような感覚がした。
別にイヤホンを奪い返してまで音楽が聴きたい訳ではないからそのまま放置して、青峰は再び寝転がった。

「あー、そう言えばまた今度ワンオンワン付き合ってくださいッスよ」
「はぁ?ぜってー嫌だ」

そう言っても黄瀬は返事など聞いてない振りをして「何か言ったッスか?」と笑いながら聞き返す。もちろんイヤホンからの音で聞き取りにくかったけれど、ちゃんと青峰の返事は聞こえていた。だけど、あえて聞かない振りをする。

「俺が勝ったらアイス奢ってください」
「ありえねぇ」

勝手に話を進めていくから、また黄瀬とワンオンワンをするはめになりそうだ。バスケは好きだ、だからバスケをしたくない、だけど、黄瀬とするワンオンワンは楽しい。二人でしたワンオンワンを思い出すと、少しだけだがバスケをしたいと思ってえた。そう思いながら、青峰は空に向かって手を挙げてシュートを打つふりをした。



それがなければ生きられない僕らは/ごめんねママ
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