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青黄と青黒/青峰は出て来ません





皮のボールが体育館の床を跳ねる音が無数にする。その音を遮るかのようにピーっと笛の音が突如鳴り響く。その音は黄瀬の横から聞こえていた、黒子が笛を唇から離すと少し大きめに口を開いてから、歩き始めた。「青峰くん、さっきのはちょっと危険でした」と青峰に向かって黒子は注意していて、青峰はめんどくさそうで生返事だがちゃんと黒子の話を聞いて頷いていた。黒子の後ろに立っているので黄瀬から黒子の表情は見えないが、振り向いてこっちに帰ってくる時の表情は僅かに緩んでいた。

「黒子っちって、やっぱり青峰っちの事が好きなんスか?」
「・・・どうしてそう思うんですか」

タオルや飲み物の準備をしている黄瀬の隣に足音が近づいてきて、黒子が戻ってきた。やはり、表情はどこか嬉しそうに見えて、思わず聞いてしまった。一瞬だけ黙ってから、黒子は返事をしたが否定ではなかった、だけど黒子の性格からしてもしもそういう風に思ってなかったら即座に否定するはずだ。
「青峰っちといるときの黒子っち、すっごく嬉しそうだから」と言われて、黒子は準備していた手を止めてから、溜息を吐き出して「そうですよ、私は青峰君が好きです」と静かに言ってから、また手を動かし始める。アクエリアスの入ったウォータージャグの中に氷を入れていく、ジャポンジャポンと中の液体が小さく跳ねた。

「黒子っちが相手だと勝てないッスね」
「黄瀬さんも」
「そう、青峰っちのことが好きッスよ。あ、これ一応秘密で」

これでもモデルッスから、と笑う黄瀬の笑顔は自分のよりもとても可愛いと思うのに、何故。黒子はじっと黄瀬を見つめてそう思った。どうかしたッスか?と黄瀬が聞いてくるので、慌てて顔を下に戻して、黒子は再び氷を液体の中に落としはじめる。
「私なんか黄瀬さんよりも可愛くないし性格も明るくないので、私の方こそ黄瀬さんが青峰くんのことが好きなら勝てませんよ」そう黒子は言って、最後の氷をジャグの中に落とすと、蓋を手にとって穴の上に乗せしっかりと閉めた。

「けど、黒子っちは1年の時から青峰っちと一緒にいるじゃないッスか。私なんか入る隙間もないッス」
「そうかもしれませんが、黄瀬さんが本気を出したら絶対勝てません。胸も黄瀬さん大きいですから」

黄瀬も準備が終わり、2人で腰掛けながら会話を続けた。目の前では渦中の人物が綺麗なシュートを決めていた、楽しそうに笑ってまた走り出す。また青峰がボールをつく音が再開した。
その姿を見て、かっこいいですよね、と黒子が言ってきたので、黄瀬も、そうッスね、と返事をした。直感だろうか偶然だろうか、青峰が2人の視線に気付いて2人を見て笑った。だけど直ぐに走り出す。ディフェンスが走ってきたが、青峰はそんなことを気にも留めないで交わしてまたシュートを打った。そして、また笑う。私たちよりもバスケが優先なのかもしれない、黄瀬はなんとなく青峰を見てそう思った。

「だけど、青峰くんはバスケ馬鹿なので今は誰も好きにならないと思いますね」
「奇遇ッスね。私も今そう思ったところ」
「幸か不幸か分かりませんが、今は安心ですね」
「黒子っちは、それで良いんスか。付き合いたくないんッスか?」

そう黄瀬が聞くと、黒子はいつもと変わらない口調で「バスケが好きな彼が好きだから、別に付き合えなくても良いんです」と言う。それを聞いて確かにそうかもしれない、と黄瀬は思った。
少し離れた場所で青峰はまだボールを追いかけている。そろそろ休憩の時間ですね、と黒子は言うと立ち上がって笛を吹いた。ピーっという音に、彼もその他の部員もボールを追いかけるのを止めた。青峰の視線は黒子に向かう、先を越されたと黄瀬は思った。笛が鳴ったから、という理由でも良いから彼の視線が一瞬でも欲しい。









ほんの少し笑ってくれるだけでいいよ
title by 彼女のために泣いた



さつきさんリクエスト
バスケ馬鹿で恋愛に興味のない青峰に恋する帝光男バスのアイドル的存在の2人
青峰が出てこないんですけど、大丈夫でしょうか






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