テキスト | ナノ
※黄瀬♀がマネージャー

夏の体育館は熱が篭もって蒸し暑い。何もしなくても汗が頬を伝って、身体の水分が出て行っていることがわかる。黄瀬は暑さに項垂れながら体育館の隅の方に移動し。壁に背を預けながらずるずると床に座った。
目の前を見ればすぐ目の前で選手達がボールを追いかけて走り回っている。同じ暑さなのに、それをおそらくは熱いのだろうが微塵にも感じさせないくらいに俊敏に動き回っていた。羨ましいなぁ、と黄瀬は小さく呟いた。

「何がですか」
「え、あ、黒子っち、どうしたんッスか」

いつもだったら気付くことができる黒子の存在を認識できないくらいに暑さで考えることが面倒で、いつの間にか隣にいたことに気付かなかった。少し慌てながら黄瀬がそう言えば、黒子はタオルとペットボトルを手渡してきた。「ちゃんとマネージャーも水分補給した方が良いですよ」と言って、黒子は黄瀬の隣に座り込んだ。
選手のことばかり気に掛けていて、そう言えば自分が水分補給したのは随分前だったことに黄瀬は気づいた。100人以上いる選手だけで精一杯で自分のことなんて考える余裕はほとんど無い。ありがたく受け取ったペットボトルを開けて水分を口に含んだ。からからに乾いて水分を失っていた喉が元に戻っていく。

「ありがとう、黒子っち」
「別に自分のついでですから」
「って、練習サボリッスか。ちゃんと後で戻ってくださいっスね」

そう黄瀬に言われて黒子は静かに頷いた。
隣で見ればやはり僕ので良いのだろうか、と思うほどに黄瀬さんはお世辞も贔屓抜きにいても可愛い、今は髪型がお団子になっていて首筋と項があらわで、とても綺麗だと思った。自慢であると同時に、本当に自分で良いのだろうかと劣等感と不安を抱かずにはいられない。思考をリセットしようと、黒子は自分用のペットボトルを開封して、中の液体を静かに含んだ。ごくん、と水分を飲み込む。
黄瀬は相変わらず黒子に嬉々としながら話しかけているが、黒子は頷いたり相槌を打ったりするだけだった。「黒子っち、不機嫌?」と黄瀬に言われて気付いた、黄瀬の表情は嬉々としたものから不安げに曇っていた。

「いえ、別に」
「だけど、さっきから上の空だし。あ、もしかして熱中症とか脱水症状とかじゃ」
「大丈夫です」

そう言っても、黄瀬は黒子の言葉を無視して慌てて立ち上がると走り出していった。お団子に出来なくて少しはみ出ていた髪の毛が小さく彼女の首筋で揺れている。
こんなにも一生懸命でかわいい子を不安にさせてしまうのは申し訳ないのだけれど、黄瀬さんは僕には眩しすぎる。遠くから黒子っち、と名前を呼びながら両手一杯にタオルや保冷剤など抱えて、笑顔ででもどこか心配そうな表情で走ってくる黄瀬から、黒子は視線を外した。










瞳の裏に原色を抱え
タイトル ごめんねママ
きりもさんリクエスト/モデルな黄瀬に劣等感ありまくりな黒子
薄暗い話になってしまった
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