分かり合う1 | ナノ




今日のメニューは和食らしい。
沙慈なんたらって坊主がトレミーにいた時に作った料理が美味くて、トレミー全体が何故か和食ブームになってから3日に一度ぐらいの頻度で出てくる。
なんだかんだ言って、俺も和食の虜だった。
特に煮物が好物だったりする。あのしっとりした感じが好きだ。
メニューをざっと読みあらかじめ煮物があることを確認して、今日も頑張れるなと刹那の座っている向かい側に腰かけた。
刹那はこちらを一瞥したが、興味がないといった雰囲気を醸し出しながらもくもくと食べ続ける。
その中で残されているものに気付いた。


「そのさといもくれ」
「厭だ」


さといもは煮物の中で俺の好物であるが、同時に刹那も好きらしい。好きなものは取っておくタイプか。
訊きはしたが、返事を無視して箸で刹那のさといもを刺す(掴むのはまだ苦手だ)と、むっとした刹那が俺のところからさといもを取っていった。


「……人のものに手を出すな」
「お前も取ってったから」


行儀の悪いことこの上ないが、食事の時間は馬鹿なことでもやってゆっくりしたい。
がきのやるようなことを繰り返し、飽きたので自分のメニューを食べることにした。
何度も噛んで呑み込み、緑茶を飲んだところで刹那が箸を休め視線を向ける。


「…ロックオン、次のミッションを聞いたか?」
「ん?ああ…アメリカで世情調査だろ?」
「そうだ」


アロウズが解体され表面的に平和になったと思われるこの世界は、まだ酷く不安定だ。
各地で強硬派による紛争やテロ等が起きている。
アメリカ内部と限定されたのは、いずれ他の地域も回るということであり、またこれらの地域の中で親玉がいる可能性があるということだろう。
その調査に当たり、黒だと判断したら介入する。方法はまちまちだが、相手が機体を所持していればガンダムで武力介入を行う。
まだガンダムの新性能を調査中であるが、以前の状態にまで持ってこれた。ひとえにイアン(ヴァスティ一家)のおかげである。

食事でゆっくりするどころかミッションの話になり、頭はすっかりそれ一色に染まってしまった。


「マイスター少ないけど、やるしかねえな」
「アレルヤたちには一応連絡を入れたらしい。ティエリアは…バックアップしてくれるようだ」
「ヴェーダ様々だな」


ティエリアに関してはイノベイターの報告と共に聞いていた。
肉体は滅びたが精神はヴェーダの一部になった、と。
その報告を受けたトレミーのクルーはかなり衝撃を受けたが、ティエリア自身が元気であり(声色が)念願のヴェーダの一部になれたことでテンションが高かったので何も言わなかった。否、言えなかった。
ただ対話が終われば戻る気はあるらしく、『僕の身体を治しておいてくれ』とか無茶を言い放った。どうやって戻ってくるつもりなのか怖くて聞けなかったが。
白いご飯を食べ続けていると、刹那が意味ありげな視線を送ってきた。


「ところで、お前はカタロンの仲間に連絡を取らなくていいのか?」
「ん、何で?」
「何でって…」


刹那は言葉を濁す。
そう言えばカタロンを抜けたこと言い忘れてたな、とふと思い出した。


「俺、カタロン辞めたんだ」
「辞めた…?」
「2つの組織掛け持ちなんて無理だったってことだ。公認スパイも楽しかったけど、これからはCB一本で行く」
「そうか」


刹那がつっこんでこないのはいつものことなので、ライルは気にせず残った食事を口に運んだ。
刹那は残しておいた煮物を口に入れると、ご馳走様のポーズをして(これも沙慈なんたらの教育である)トレイを提げる。
ライルも最後の一口を終えて、片づける刹那の側に寄った。


「ミッションまで暇か?」
「まあ…どうかしたか?」
「あんまり動いてないから、身体がなまっててよ。手合わせを頼む」
「了解した」


刹那の返事に、ライルは口角を上げた。


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