Xmas(二人旅) | ナノ


※4のその後

Xmas




『メリークリスマス、刹那、ロックオン』
「…あーそっか。クリスマスか」
『…メリー…クリスマス…』


昨日定期連絡をした筈なのに、いきなり端末音に呼び出されて何かと思えば、これか。
ロックオンの持つ端末を覗き込む刹那も、目を見開いていた。
アレルヤが始めにメリークリスマスと言ったが、その場にティエリアもいた。
彼は、イベント事が嫌いで去年トレミーでクリスマスを祝った時も早々に抜け出していた。
そのティエリアがアレルヤの隣で小さな声でメリークリスマスと言ったのだ。
驚かない方が無理な話だと思う。


『今、こっちでパーティをしてるんですよ』
「なるほど、ミス・スメラギだな。逃げたのか?」


酔っぱらった彼女程厄介なものはない。恐らく2人とも逃げて来たのだろう。ティエリアは認めないだろうが。
案の定、アレルヤは苦笑いで誤魔化した。
端末越しで分かりにくいが、アレルヤもティエリアの顔も赤い。酒を飲まされ彼女の犠牲になったのだろう。


『気をつけろ、刹那。帰ってきたら、スメラギ・李・ノリエガはお前に酒を呑ませるつもりだ』
「…了解した」
「刹那は酒強くないからなー」


隣にいる刹那の頭をがしがしと撫でると、手を振り払われる。
相変わらずの反応なので、さして気にする事もない。
むしろ約半分の確率で振り払わなくなったのだ、そちらを喜ぶべきだろう。
笑いながら手を引っ込めた俺を見て、アレルヤは表情を和らげた。


『…邪魔しちゃったかな?』
「まさか。俺たち基本的に寂しがり屋だからな、ありがとうよ。アレルヤ、ティエリア」
「お前はそうだが、俺は違う」
『いえ。クリスマスは恋人の逢瀬の日でもあるのでしょう?2人でゆっくりすればいいではありませんか』


刹那のつっこみを無視し、ティエリアは酔いの回った笑顔でそんなことを言い出した。
ティエリアなりに気を遣った言葉だったらしいが、まさか彼にそんな素敵な気遣いをされるとは思わなかった。
反応が大きかったのは俺や刹那よりも、アレルヤの方だったが。


『ちょ、ティエリア!君、直接過ぎやしないかい!?』
『逆に君は遠まわしすぎるだろう、分かりづらい』
『だって隠してるつもりかもしれないじゃないか…!』
「ははは……2人とも気遣い感謝するぜ?じゃあな」


何だか年下の2人に気を遣われる事に慣れてなくて、気恥ずかしくなった俺は通信を一方的に切った。
ふう、と息吐いて刹那の方を身体ごと向ければ、彼は困惑した表情でこちらを見ていた。


「どうした?」
「誰が、恋人…?」
「あ、そこね…」


刹那が疑問に思うのも無理はない。俺たちは決定的な言葉を口にしていないのだから。
それでもキスしても抵抗しないし、身体の関係だって過去に一度あった。旅が始まってからはまだした事はなかったが。
俺は、お前を恋人だと思っているけどな…と弱い俺は言えずに目を閉じて車のシートに凭れた。
ゆっくりと目を開けると、俺の上に目を大きくさせながら覗き込む刹那と視線が合う。


「刹那?」
「恋人かどうかはよく分からないが、逢瀬なら出来る」
「…へえ」


顔を近づけてくる刹那に目を細めて彼の様子を見守る。
そのまま唇を重ねてきて、俺たちは同じタイミングで目を閉じた。
刹那からキスしてくるなんて滅多にない。この機会を逃すつもりはない。
俺は刹那の後ろ頭に手を添えて歯列を舌でなぞり、口を開かせると舌を捕えて引っ掻き回した。


「っは…ん…」
「…まだ逃がさない」


呼吸をするために離れた刹那を追い掛けるように腰に手を回し、再び口を塞ぐ。
苦しげに眉根を寄せた刹那だが、もう一度舌を絡めれば諦めたのか俺の肩に手を置いてキスに専念する。
十分に堪能した後、付け足したようにイベントでのお決まりの科白を述べた。


「メリークリスマス」
「…メリー…クリスマス…」


律儀に返した刹那に、よく出来ましたの意味を込めて頭を撫でた。


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