こんな日常 | ナノ



肌寒い朝にティナは目を覚まし、外套を被りテントの外へと出た。
近くにある水辺で顔を洗い、再びテントの方へと戻る。
寒い中、ティーダとフリオニールが小さく会話をしながら楽しそうに朝食を作っていた。
途中ティーダがこちらに気付き、にっと笑った。


「ティナ、おはよ」
「おはよう、ティーダ。フリオニール」
「おはよう」


フリオニールが若干照れながらティナに朝の挨拶を返した。
初な反応にティーダはフリオニールの後ろでにやにやと笑っていた。


「バッツに怒られるッスよ」
「ち、違う!俺は…!」
「…?」


ティナは2人が何を話しているのか分からず、首を傾げた。
とりあえずまだ眠っている仲間を起こさないように、朝食を準備していた2人の手伝いをする。
と言っても、ほぼ料理は出来ているので盛り付けをするだけである。
まだ言い合っていてだんだん声の大きくなっていくティーダたちに、少しトーンを押さえるように言おうとしたところ、緑のテントから「五月蠅いよ」と寝起きのせいかいつもより低い声のオニオンナイトが出てきた。


「わり、」
「僕はいいんだけど、二日酔いの奴らがまだ転がってるからさ」
「ああ……」


フリオニールは思い出したくない光景を脳裏に浮かべ、苦い顔をした。
昨夜、皆で談笑している時にコスモスがやってきて、何故か酒を用意してくれた。
一升瓶やら缶やらを置き、ごゆっくりという労いの言葉を述べて去ってしまった。
皆何が起こったのか分からず茫然としていたが、自称酒豪のクラウドが一升瓶を開け、更に隣にいた自称ざるのセシルがライトやバッツを誘った。
その後惨事となったわけだが…詳しくは、いつも朝早いライトや薪割りに行くクラウド辺りが起きてこないことで察してほしい。


「オレは玉葱と早く寝たッスけど、フリオニールは最後までいた?」
「ああ…スコールと後片づけしたが…もう二度と呑ませたくないな」


うんざり言うフリオニールに、早く寝て良かったとオニオンナイトは心から思った。
会話を終え盛り付けしているティナを見て、手伝いに行った。


「ティナ、おはよう。僕もやるよ」
「おはよう。スープがあるから、お願いしてもいいかな」
「分かった」


ティナ専用の笑顔を浮かべてオニオンナイトは手際よく盛り付けをしていく。
ティナがメインになる魚を盛り付け終えた時に、地を這うような声が聞こえてきた。


「…う、頭痛い…」
「俺もだ…」
「おはよ、クラウド、セシル。近くに水辺があるから顔洗ってくるといいッス」


2人とも頭を抱えながら起きてきたクラウドとセシルにティーダは苦笑いを浮かべた。
酒豪とざるはどうやら嘘のようだ、とその場にいる誰しもが思った。


「…うん。ライトはまだ寝かしておいてあげてね。悪酔いしちゃったみたいだから」
「スコールとジタンは?」
「まだ寝てる。昨日かなり世話を掛けたしあいつらも寝かしておくべきだな」


フリオニールにも世話を掛けたのだが、クラウドは全く覚えてないらしい。
セシルとクラウドはそう言うと、重い足取りで水辺を目指した。
2,3歩で足元がおぼつかない様子だったので、見かねたフリオニールが二人を支えに行く。
そのまま水辺へと歩いていった。
オニオンナイトはやれやれ、と大人じみた表情を浮かべ、ティーダはフリオニールがんば!と小さく声援を送っていた。


「あ、ティナも玉葱も盛り付けサンキューな!後はオレがやるからいいよ」
「そう…?」
「ああ。ティナは…バッツを起こしてきてほしいッス」


ティーダが副菜をつけながら、ティナに言った。
オニオンナイトは目を瞠る。


「ちょ、ティーダ…!」
「うん、分かったわ。バッツは緑のテントの方だよね?」
「そうッス。よろしくー!」


ティナがグレーのテントを側をそっと掛け抜けて、緑のテントへと物音を立てずに慎重に入っていく。
ティーダが手を振り終えた頃、オニオンナイトは彼の方を睨んだ。


「緑の方…バッツ一人だったよね?」
「まーな。玉葱は心配しすぎだろ?」
「……」


玉葱と呼ぶな!とか、ティーダは危機感が全く感じられない!とか言いたかったようだが、全て呑み込んだ。
バッツを起こしに行こうとするティナの笑顔を見てしまったからである。
オニオンナイトは溜息を吐き、席へと座った。
恋愛対象ではないが、ティナを大切に思っているのは自分も同じだから余計に悔しさを感じる。
ティーダは拗ねた様子のオニオンナイトに、空気の読めない一言を発した。


「男なんだから、皆の前で泣くなよ?」
「なっ、ティーダじゃあるまいし!」
「どういう意味だよ!」


ぎゃあぎゃあ騒いでるティーダとオニオンナイトの声に起こされたスコールとジタンは、目の前で髪を掴んだりして喧嘩をしている2人に深い深い溜息を吐いた。






ティナは緑のテントの中に入り、バッツの眠っているところまで這っていった。
バッツは毛布をかろうじて足に掛けているだけであり、腹を出して寝ていた。
ティナは毛布を掛け直し、起こそうとしたところバッツが寝返りを打ちティナの方へと顔を向けた。
やがてまた寝息が聞こえてきたので、起きたわけではないとティナは息を吐く。

(…睫毛長いのね…知らなかったわ…)

少しの間食い入るようにバッツの顔を見ていたティナは、自分の使命を思い出し慌てて起こそうとバッツの肩を揺する。
途中ティーダとオニオンナイトの大きな声が聞こえて、テントの入口に顔から向けた。


「なに…?えっ、」


突如腕を掴まれ、ティナはバッツの眠っていた毛布の上へと反転する。
頭の後ろに回ったバッツの手がクッションとなっていたおかげで痛くはなかったが、何が起こっているのか分からなかった。
目の前にバッツの顔がいつもより近くにある。
バッツはティナが目を白黒させている状態の時に、目を細めて頬に唇を落とした。


「ばっ、」
「おはよう、ティナ」
「お、おはよう…」


押し倒されている状況の中、ティナは律儀に朝の挨拶を返した。
バッツは満足そうに微笑み、ティナの前髪をそっと上げて額にも唇を落とす。
そのまま耳朶、鼻先…と順番に口づけられ、ティナはパニックで声も上げられなかった。
次に首筋に来た時に、か細い声で悲鳴を上げる。


「っ…や…」
「可愛い」
「ば、バッツ…ま、って…」


さすがに危機感を感じたティナはバッツの胸を押すが、びくともしなかった。
首筋から離れたバッツは、ティナの頬を撫でて再び顔を寄せる。
唇が触れ合いそうな距離になった時に、目を閉じた瞬間バッツがそのまま倒れてくる。
何事かとティナはバッツの身体を横にして起き上がり、入口の方を見た。
すると仁王立ちをした兜のないライトが昨日開けた酒の瓶のコルクをバッツに投げたことが分かった。


「ライト…?」
「…私はまだ、そこまで赦してない」


ライトはよく分からない言葉を発し、そのまま頭痛に耐えられず頭を押さえながら蹲った。
ティナの身体の上にはコルクが頭に直撃して気絶したバッツ、側には二日酔いの頭痛に悶えるライトの姿。
ティナはこの状況をどうすることも出来ず、オニオンナイトが来るまで放心していた。




※残念なおまけ

■コスモスとオニオンナイトに説教を受ける?バッツ
コス「私から言えることはひとつです。あなたは分別のある大人なのですから、時間帯を考えて行動してください」
オニ「ちょ、コスモス!そういう問題じゃないよ!」
コス「ですが、禁欲は身体に悪いですので。お酒だけでは駄目でしたか…次は麻雀を、」
オニ「それもおかしいって!大人だから我慢するんだよ!」
バ「えっと…おれ、何したんだ?」
オニ「自分の胸に聞いてみなよ!」
バ「?頭いてえ……」


■ティナを保護した二日酔い+α
セシ「ティナ」
ティナ「セシル…」
セシ「大丈夫?」
ティナ「ええ…少し、驚いた…だけ…(思い出して顔を真っ赤に)」
クラ「……セシル」
セシ「なに?」
クラ「朝飯が足りないから、狩りに行ってくる(バスターソードを肩に乗せ)」
セシ「奇遇だね。僕もそう思ったんだ。一緒に行くよ(暗黒剣を持ち)」
ジタ「待て待て!そっちはバッツたちの……お前らまだ酔ってるのか!?おい、スコール!こいつら止めるの手伝え!!」
スコ「……(またか…)」


フリ「………」
ティー「…読みが甘かったかな…バッツも男だったッス」
フリ「………」
ティー「フリオニールは、少し免疫つけた方がいいッスよ」
フリ「余計なお世話だ!」


ライ「…うう、頭が割れそうだ…」



オチなしサーセン!


****
高瀬様からのリクエストで、バツティナ+コスモス勢でほのぼの…しすぎだろうという(笑)特に二十歳以上のキャラが悲惨なことになってますね。
バッツは寝起きの二日酔いで、フラグクラッシャーの皮が剥がれたようです。ティナ総愛になりましたが、バッツ以外は恋愛の意味ではないです。
フリティも好きとおっしゃっていただけたので、カプではないですがコンビ達を出させていただきました。
因みにカオス勢も酒盛りしたというどうでもいい設定(笑)


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