ただより高いものはない | ナノ


※ニル刹♀前提ライ刹♀です。…多分ライ→刹♀です。


刹那はずっとロックオン…戦死したニールを想いながら、生きて戦うことを4年前に誓った。
しかし、その誓いは音を立てて崩れてきている。
ロックオンが必要だからと自分に言い聞かせて、彼の弟を自分が連れてきたことによって。




ただより高いものはない




格納庫でダブルオーを見つめる。
ここにいると少し気持ちが落ち着いた。戦いのことを考えていられる。
刹那は息を吐き、身体の力を抜いた。
その時に、背後から強く抱き締められる。
頬に自分のではない、柔らかい茶の髪を認識して刹那は身体を強張らせた。


「ロックオン…なにを…」
「刹那が泣きそうだからな」


ロックオン…恋人のニールとは違い、ライルに抱き締められて、胸が苦しくなる。
放っておいてくれたらいい。
ライルは目敏く刹那の気分が沈む頃を見つけて、優しさを無償で提供していく。
彼の優しさは麻薬のようで、だんだんと刹那の中に残す。
そして麻痺させて感覚中枢を支配する。
ニールだけを想うことが出来なくなりそうで、刹那は怖かった。


「はな…せ…」


男と女では基本的な力差がある。
どちらも鍛えている分、やはり性別の差で敵わなかった。
ライルはゆっくりと背中を撫でる。
それだけで、刹那は涙が溢れそうだった。
以前まではこんなことはなかったのに。
ライルの優しさで駄目になっていく。


「頼むから、離し…んっ」


刹那が最後まで喋る前に、ライルは刹那の顎を上げて上から唇を重ねてきた。
ただしっとりと重ねられただけだ。
それだけなのに、刹那は抵抗出来ずに受け入れてしまった。
ふわふわしている。ここにいる筈なのに、どこか遠くから自分を見ているようだった。
開いた目をライルの目と合わせると、くすりと笑った気がする。
刹那はその仕草で我に返り、反転してライルの身体を突き飛ばした。
ぐいっと乱暴に、手の甲で濡れた唇を拭う。


「な、何故……」
「好きだから」


ライルの一言に、胸が軋んだ。
刹那は逃げるように後ろ向きに歩みを進める。
踵が当たり、すぐに壁に塞がれてしまった。
ライルは苦笑を浮かべて、距離を詰めてくる。

(怖い、ニールが消える…塗り替えられる)

刹那は恐怖に引き攣った表情を取り繕うことなく浮かべた。


「兄さんを忘れるのが、怖い?」
「あ…あ…」
「…やりすぎたな…ゆっくり深呼吸して」


身体を震わせる尋常でない刹那の様子に、ライルは表情を変えることなく落ち着かせようと言葉を掛けた。
刹那は言われたまま呼吸を繰り返す。
無意識の内に、自分の中にある感情を吐露しようとしていた。


「…俺は、ニールだけを…」
「刹那」
「ニールだけ…あ、ああ…」


刹那はその場に崩れ落ちた。
ライルは刹那の顔に合わせるために、しゃがみ込んで柔らかく抱き締める。


「…兄さんのために、お前の人生を棒に振らなくてもいい」
「…ラ…イル、」
「兄さんは…兄さんの勝手で死んでしまったから。刹那が罪悪感を感じる必要はない」


違う。罪悪感ではない。
だが、心のどこかで自分を追い詰めていたのかもしれない。
ライルはそう言ってくれたが、暫くはニールのことは忘れないだろう。今までそうだったように。
刹那はライルの言葉に涙を止める術を失った。


****
無償の愛はないよな…という話。家族愛は別として、恋愛の意味で。
結局何が書きたかったのか…刹那が追い込まれるところです(笑)
ライルさんは優しさに付け込む気満々です。自覚もありです。
刹那♀が活かしきれてないです…申し訳ないです。


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