誤解→和解3 | ナノ




結局、いつものルートセールスに行った後に会社に戻っても、ライルの姿はなかった。
安心するような、次の日に持ちこされたような…複雑な思いだった。
一度帰宅してからハレルヤとソーマの家に向かおうとした時、マンション近くに見慣れた車が停めてあった。
これがライルのものだ…と気付いた時には、運転席から車の所有者が出てきた。
傍から見たらかなり怪しいだろう。


「…先輩」
「よう、刹那」
「………」


軽い挨拶だった。何故だかとても機嫌がいいらしい。
既に誤算である。刹那はもっと重苦しい雰囲気かと思っていた。
刹那は注意深くライルを見つめた。


「…ここでは目立つ」
「そうだな。車に乗れよ」
「いや、いい。家に来い」
「へえ…?」


ライルは面白そうに笑った。
虚勢を張っているのがばれたのだろうか。手は震えないが、心臓が破裂しそうだ。
ライルが車をマンションの駐車場に置いてくる。
今日はソーマのところに行けないだろうなと思い、携帯で連絡を取ろうとしようとした。
それを戻ってきたライルが手を伸ばして刹那の携帯を取ってしまう。


「…何をするんだ」
「彼女への連絡だろ?ハレルヤが今日はいいってさ」
「ハレルヤが?」


ということは、ソーマがハレルヤの彼女だと話してくれたのだろう。
では、ライルを別に部屋に入れることもない。弁解をする必要もない。
鍵を開けながらそう思っていた。


「分かっているなら、昨日のことは怒っていないのか?」
「うーん…じゃあ逆に質問するが、怒っていたらお前が困ることがあるのか?」
「え…?」


質問に質問で返されて、刹那は詰まってしまう。
ライルは刹那の携帯を指で遊びながら、少しずつ刹那を追い詰めた。


「俺のことどうでも良ければ、困らないだろ?」
「それは…」

(何故だろう)

「…いい加減、待つのも飽きたからさ」


ライルはそう言うと、刹那が玄関の扉を開けるより前にドアノブを回し、刹那の腕を引いて部屋に入った。
そのまま刹那は身体を反転させられて、背中をドアに押しつけられた。
ガタン、と音がして背中に少し痛みが走る。
顔を上げると、思ったよりも近くにライルの顔があった。


「ライル…っ!」
「少しは気を赦してるなら、もう全部俺のものになっちまえよ」
「なっ、んん!」


刹那が何か言う前に、ライルは頬に手を添えてキスをしてきた。
触れ合った場所が熱い。
抵抗しようと伸ばした腕は、ライルに取られてドアにあてられた。
ライルの手は熱いのに、触れたドアは冷たく、逆に頭が冷えて冷静になってくる。

(本当に、いやではないんだ…)

ハレルヤの言った通りだと思う。
そうとなればやられっぱなしというのは自分のポリシーに反するので、刹那はどうにでもなれ状態で舌を絡めた。
ライルが微かに驚き、唾を呑み込む。
刹那は空いた方の腕をライルの背中に伸ばした。


「んん、ん…っ…」
「ん…っは、…まさか、やる気満々で来るとは思わなかった」


ライルは顎につたる互いの混ざった唾液を舐めて、笑った。
刹那も、力が抜けて一人では立っていられない身体を誤魔化すように、片手でライルを抱き締めて笑った。


「お前、全然待ってないだろう?今までといい今といい」
「いや…待ったよ。随分な」


ライルにしては待ったということだろうか。抱いているせいで表情が見えないので、よく分からなかった。


「……お前に、全部はやれない。俺に出せる答えは、いやじゃない…だから好きなのか?ということだ」
「まあ今んとこは、十分だろ」


ライルは靴を脱いで刹那の身体を抱えるようにして、部屋に入っていく。


「で、先に進む気はあるか?」
「…少しは我慢しろ」
「あんなチューしといて、無理だろ」


苦笑交じりにライルは言う。
それもそうかもしれない。普通がよく分からなくなっているし、どうでも良かった。


「俺は腹が減った。腹ごしらえしてからならいい」


その後、2人で即席料理を作り半分も食べ終わらないうちにベッドに流れこむ羽目になった。
安物ベッドだったので、ぎしぎし五月蠅かった。
買い替え時か…と考えている自分が、今までで一番いやだった。






「で、どうだった?今度こそやったんだろ?」
「…死ぬかと思った」
「そりゃそうだろ。結局あの人も欲望に忠実に生きてんだな…」


ライルもお前には言われたくないと思う、と刹那は心の中で呟いた。
ハレルヤはソーマ特製のタコさんウインナーを食べながら、ご愁傷様と心の中で言った。


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