誤解→和解1 | ナノ


※ハレソマ含みます。ライ刹よりナチュラルにいちゃついているので注意(笑)


「…料理を教えろ?」
「ああ…正直生きた心地がしねえ」


刹那が定時に帰ろうとした時に、突然ハレルヤに声を掛けられた。
何事かと思えば、最近同棲し始めた彼女が料理音痴らしい。その彼女に教えてほしいと頼まれた。
もう一週間彼女の手料理を食べ続けているらしい。
体重も落ちてさすがに死ぬかもしれない、と訴えてきた。

(惚気か…?)


「…お前が作ればいい話だろう」
「あいつ頑固だから、自分で作るって言って聞かねーんだよ。俺もそんなにうまかねーし」


やはり惚気らしい。
刹那は馬鹿馬鹿しいのでそのまま踵を返そうとした。
しかし、ハレルヤは刹那の性格を分かっていたので次の手を出してきた。
刹那の趣味を熟知していたので、物で釣る作戦だ。


「2週間夜だけでいい。等価交換としてエクシアのプレミアムスナップ集でどうだ?ネットでも手に入らなかったんだろ?」
「何故お前がそれを…!」


限定100部のスナップは予約が殺到し、刹那はあと一歩のところで予約出来なかった。
それを何故ハレルヤが持っているのだろう。ガンダムファンでもないのに。
恨みがましい視線を送れば、ハレルヤはにやっと笑った。


「運が良くてだな。な?やるか?」
「…仕方ない。今から行こう」


すっかりやる気になった刹那に、ハレルヤはほくそ笑む。
刹那にしても、この俺様の彼女がどんな女性か知っておくのも悪くないと思った。
ハレルヤの住むマンションは会社から近いので、二人は歩いて帰った。






「ソーマ、帰ったぜ」
「お帰り」


キッチンに立つエプロン姿の女が振り返る。
さらさらと流れる清潔な髪、幼さの残った可愛らしい顔立ちに、刹那は目を細めた。
見目麗しく、かなりいい女だろう。
料理が出来ないのは致命的だとは思うが。
正直な話、ハレルヤが何故彼女を手に入れられたのか心底分からない。粗暴な男なので、犯罪すれすれなことをしてないといいが…と刹那は見当違いなことを考えていた。


「ん?…客人か?」
「ああ。お前の料理指導…って、うおっ!!」


いきなり玄関に向かって包丁が飛んできた。
包丁はハレルヤと刹那の間を通り玄関のドアに突き刺さる。
刹那は冷汗が額から鼻にかけて滑り落ちるのを感じた。

(前言撤回だ。こんな暴力的な女に料理を教えるなんて無理に決まっている…!)

刹那は今からでも自分の部屋に帰ろうと思った。逆方向であるが、ここから遠くはない。
逃げようとする刹那を察知したハレルヤは、刹那の腕を掴んで無理矢理部屋に上がらせた。


「包丁投げんな!危ねーだろ!」
「……(危ないどころか、死ぬだろう)」
「五月蠅い!私の料理がそんなにいやか!」
「いやとかの問題じゃねえよ!殺人的だろうが!」
「な…!それならば何故食べる!?」
「てめえのだからに決まってる!」


そのまま痴話喧嘩に突入した。若干惚気も入っているようだが。
ただ、口だけでは済まずにお玉やら鍋やら色々なものが飛び交っているが。
刹那は頭に当たらないように鞄でガードし、壁の後ろに隠れた。
ハレルヤはいつものことなのか、器用に避けてソーマの両腕を掴んで拘束すると、口を塞いだ。

(…おい、俺がいるだろう)

そのままキッチンでエプロンプレイになっては非常に困るので、刹那は静かになった部屋の中でわざとらしく咳をした。
我に返ったハレルヤの彼女は、刹那がいることに気付いて顔を真っ赤にする。
ハレルヤはハレルヤで、刹那の方に顔だけ向けて「邪魔すんなよ」と視線で訴えた。
もう帰ろうかと本気で思ったが、エクシアをまだ渡されていないので考え直す。


「…この男は、これからもあんたの料理を食べていきたいから、あんたが上達するように俺を呼んだ。決してあんたのことを馬鹿にしたわけではない」
「お前が言うなよ」
「…ハレルヤ…」


照れて後頭部を掻くハレルヤに、ソーマはふっと笑った。


「すまない。客人にも失礼した。私はこいつの同居人のソーマだ。えっと…そちらは?」
「刹那だ。ハレルヤとは同じ会社に勤めている」
「ああ、噂の…」


ソーマの言葉に刹那は顔をしかめる。
ぎろりとハレルヤの方を睨んだが、ハレルヤは面白そうな顔をしてから視線を逸らした。


「…噂のとは何だ?」
「女好きだった上司と付き合っている、変わった者と」
「ハレルヤ…」


刹那は脱力する。
実際に刹那と上司であるライル…は付き合ってはいない。
ただ、本気ということを半分ぐらい証明したらしい。ライルが自分で言っていた。
あの時のことを思い出すと………否、思い出したくない。
気の迷いだった。あれから刹那はライルを部屋に入れていない。入れたら今度はどうなるのか分からないのだから。


「付き合っていない。というか何故お前が俺たちのことを知っている?」
「あの人に相談されたんだよ。ってまだ付き合ってねーの?」


ハレルヤは心底驚いた表情をしている。

(そんなに驚くところか)

刹那の機嫌が急降下していく。
ハレルヤはこの話題は良くないと思い、本来の目的に移ることにした。


「それはいいからソーマ、こいつに料理を習え。お前なら出来るだろ」
「…お前に目にものを言わせてやればいいんだな」
「……おい」
「ということだ。よろしく頼む、刹那」


人を差し置いて、話を進めてしまった。
刹那は溜息を吐き、これもエクシアのためだと自分に言い聞かせながら、ソーマの料理の特訓をすることにした。





ソーマの料理は酷いの一言では済まされなかった。
それまで作っていた彼女の料理は残念ながら廃棄処分という形になった。環境に良くないので心苦しいが、食べられたものではなかった。
ソーマの悪いところは、まず味見をしない。それから砂糖や塩といった調味料の量がアバウトすぎる。いや…アバウトどころの話ではない。
彼女の絆創膏の巻かれた指を見れば一生懸命なのは分かるが、ハレルヤはよく死ななかったな…と同情する。
愛のおかげで一週間持ちこたえたのだろう。ただハレルヤが強靭な内臓の持ち主なだけかもしれないが。


「調味料は暫く計量スプーンで正確に計ること。慣れるまでは目分量はするな」
「了解した」


野菜スープを作るだけでかなり時間がかかってしまった。
とりあえず今日はここまでにして、後は冷凍庫に入れてある冷凍食品を乗せておいた。
風呂に入っていたハレルヤは、出てきたご飯と野菜スープ、冷凍食品数品に感動していた。

(…メインがないが、いいのか)


「今日はここまでだ。手つきは危ういが、先程言ったことを守れば普通に料理は出来る。あとはレパートリーを増やすだけだ」
「ああ、ありがとう。明日も来てくれるのか?」
「…2週間の約束だからな」


刹那はそう言うと、ソーマはほっとした表情になった。
やはりハレルヤが喜んでくれる料理を作りたいのだろう。その心意気だけは可愛いのかもしれない。
先程包丁が飛んできたことは忘れて、刹那は彼女のために料理を教えようと思った。
面白くなさそうにハレルヤは見ている。頼んでおいた本人のくせに、だ。
ハレルヤは背後からソーマの身体を抱き締めて、刹那に忠告をした。


「刹那、ソーマに惚れるなよ」
「何故そうなる」
「ハレルヤ、失礼だろう。この男には相手がいる」


それは先程話していたライルのことだろうか。
否定するのも面倒で、刹那は嫌そうな顔だけしておいた。
ソーマは首を傾げたが、ハレルヤは刹那の気持ちが分かったのか苦笑を浮かべた。


****
ハレソマにも振り回される編。
以下どうでもいいこと↓
ソーマのパパはもちろん大佐で、アレマリが結婚して大佐と同居することになったので、ソーマが来た、と。
大佐涙目。


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