困惑→期待 | ナノ


※刹那のタメ語は2人の時のみ。人前では一応敬語。(ライルに対して)


『本気だってことは、これから証明していくから』


振られた直後のライルに告白された(?)刹那は、あれから彼に何かされることはなかった。
丁度忙しい時期と重なったのが原因である。
会社の方で新規事業に取り組むために、新たなチームが組まれ、幸か不幸かライルを営業リーダーとして刹那もチームの一員となった。
そのため半月ぐらいは残業が多く、飲みに行くのも控えている。ライルが家に来ることもなく、何かあった時は会社に泊まっているらしいと同期から聞いた。
何もなくて安心しているが、仕事でも大胆不敵なライルのことなので、何か仕掛けてくると思った。
だから拍子抜けしたのは事実である。だが、別に何かしてほしいわけではない。断じて違う。
考え事をしながら書類整理をしていると、隣の席のハレルヤに書類で頭を叩かれた。


「ぼーっとしてんじゃねえよ」
「…ハレルヤ」
「ハレルヤ様だろ?」


ふざけたことを言う隣の席の男は、どうやら年上であるが(と自分で言っていた)同じ時に就職活動をし、面接で逢い、気が付いたら入社を終えて隣の企画部署に配属になっていた。そして何故か席も部署の隅で隣だった。
必然的に話す機会も多くなり、おそらく一番気心知れた同期である。
仲がいいかは別であるが。


「…お前、それ電話でライル先輩に頼まれていた資料だろう」
「そうなんだよなー、そろそろ帰ってくる筈だけど…」


そう言っているうちにライルが部署に入ってきた。
忙しなく動くライルに、ハレルヤはさりげなく資料を渡す。
ライルは疲れた顔で礼を述べて、それから刹那に視線を向けた。
目が合い、心臓がどくっと音を立てる。
ライルはそのまま視線を合わせた状態で、刹那のデスクの前まで来た。


「刹那、出られるか?」
「え…?あ、はい」
「じゃあ来てくれ。以前お前が担当したところに行く」
「資料はいりますか?」
「いや…今日は挨拶だけだからいい」


慌ただしく出ていくライルに、刹那は椅子にひっかけてあった上着を羽織って追いかけた。
「頑張れよー」と気の抜けたエールを送ったハレルヤに、刹那は眉根を寄せたが。
自分の車の運転席に乗ろうとするライルに、自分が運転すると言えば、お礼を言われた。
そのまま鍵を取り刹那は運転席に乗り込む。ライルは助手席に腰掛けてシートベルトを着用する。
エンジンをかけてから、どこにいくのか聞いた。


「ああ、ユニオンな」
「…あそこか」


言い澱むと、ライルは首を傾げた。


「何、ユニオンでなんかあったか?」
「いや」


刹那は出来るだけ無表情を装い、発進させた。
ライルは何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。
暫くするとライルの好きな音楽だろうか、洋楽のバラードも重なりライルは船を漕ぎ始める。ちらりとライルの顔を見ると、微かに隈が浮き出ていた。
眠れていないのかもしれない。チームリーダーともなればチーム要員よりも大変なのは当然である。


「…着くまでに時間があるから、寝ていたらいい」
「いや…今日は早く帰る予定だからいい。上司が寝てたら格好つかないしな」


ライルはそう言いながら、大きな欠伸をする。
刹那はそれ以上何も言わなかった。







ユニオンとの話は、ライルの言った通り商談に入らず挨拶程度だった。
刹那が前に担当した営業部長はいなかった。心から安心した。
グラハム・エーカーと名乗った男は、日本語か分からない言葉を発し、事あるごとに飲みに誘われるのでうんざりしていた。
一度飲みに行ったことがあるが、ライルとの出来事以上のことをされそうだったので顔面を殴ってしまった。
かなり酔っていたので覚えていないと思う。実際に次の日電話がかかってきて、そんなことを言っていたから。
取引に影響は出ていないので大丈夫だ…と思う。

刹那が行きと同じく帰りも運転していると、ライルはユニオンで見せていた仮面の笑顔を取り去り、眠気を吹き飛ばすために伸びをした。


「ふう…一段落だな。あそこもうちと一緒で保守的なのが多いから厄介だぜ」
「そうだな」
「ところで、これからお前の家に泊まってもいいか?」
「…え…?」


刹那は驚いてブレーキを踏みそうになった。
ライルはプライベート用の微笑を浮かべて続ける。


「警戒してる?」
「いや、その…」
「とって喰いはしねーよ…と言いたいところだが、まあ半々かな」


それは安心出来ない。むしろ不安にさせているのか。
刹那は怪訝そうにライルの方を一瞥した。


「あんた疲れてるだろ。さっさと家に帰って寝た方がいい」
「刹那を抱いて寝た方がよく眠れそうじゃね?」
「抱き枕になるつもりはない」


刹那が一刀両断すると、ライルは困ったような笑みを浮かべた。


「…困ったな…お前がそう言うと、俺は今日野宿だよ」
「何故?」
「兄さんと元カノが家にいるから。さすがに帰りたくないだろ?」


なかなか複雑な兄弟である。
そう言われてしまうと、刹那の方が困った。
実際ライルの困った(弱ったも含む)表情に弱いのだ。だから振られたと泣きついてきた時も拒否出来なかったのだ。
刹那は結局絆されている自分に溜息を吐いた。
会社に戻らなくてもいいと言うので、自分の住んでいるマンションの駐車場に車を停める。
エンジンを切ってシートベルトを外す。


「…何かしたら蹴り出すぞ」
「ああ。…ったく、いつ好きになってくれるのかねえ…」
「本気をまだ証明していないのに?」


刹那が呆れたように言うと、ライルはふと真面目な表情になる。
何か失言をしただろうか、と刹那は悩んだ。しかし刹那には思い当たる節がない。
とりあえず部屋に戻ろうと車のドアを開けようとすると、腕を取られた。
顔が近付いてきたのでまたキスされるのかと思い、腕を振り払おうとする。
しかしキスではなく、ライルは刹那の顔をよけて耳を食んだ。


「っ、な…!」
「刹那は、俺が本気になっていいと思ってるわけか?」
「え…」


(何を言っているんだ?)

刹那が問いに答えられないと、ライルは不機嫌さを増した。
本当のところどうなのだろう。実際期待していたのかもしれない。
刹那の反応の鈍さにかは分からないが、ライルは盛大な溜息を漏らした。


「…まあいいや。とりあえず泊めてくれ。お前は抱き枕でいいからさ」
「…先輩、それ譲歩していない」
「ライル、な」


刹那の鼻を摘んだライルは、にやにやした意地の悪い笑みを浮かべていた。

結局、家に入れてからライルの言う本気を早々に見せられた刹那は、次の日仕事中は平静を装っていたが休憩中等ぐったりとしていた。
その反対にライルは疲れも吹っ飛んだ顔で活き活きとしていた。
隣の席のハレルヤが、「とうとうやっちまったのか…」と憐れみの眼差しを向けても、刹那には分からなかった。



困惑→期待



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リクがありましたので、リーマンライ刹第二段です。
あ、実際ライルは刹那にいれてないですよ(笑)頑張っても●股までかと(…)
リーマン刹那はいつもの2割増しで流されあほの子なので(今勝手に決めた)、次ライルを部屋に入れたらしっかり喰われてると思います(笑)へたれの顔も3度までということで…あ、違いますね。へたれの3度目の正直です(意味不明)
因みに刹那は会社近くのマンションを借りて歩きで出勤、営業に出る時は専用車にて。ライルは実家通いなので自分の車です。

ハレルヤは完全な趣味です。ニールの方にティエリアとかアレルヤをおきたいと思ったので、消去法でもあるんですが。ニール側出してもないのに。
ハレルヤに営業をやらせたら大変だと思ったので、企画に…ですが、どれも違和感しかないです(笑)
ハレルヤは勘が良くて実際にライルに相談されていたので、ライルが刹那のことを好きだと知っている…そんな設定。

でも、営業の仕事ってどんなんでしょうね← 適当すぎです。
営業の方が見ていたら…土下座します。ごめんなさい。


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