vo.ディランディ | ナノ


Bディラロイド


つい先日、俺はティエリアから紹介されたソフトをインストールした。
宝くじで10万当てた金をぼったくられたが、彼が珍しく絶賛するので気軽な気持ちで導入してしまった。
今、そのソフトは正常に動き、俺の生活を支えていてくれる。若干規則正しすぎていやになることもあるが。


「マスター、飯出来たぞ」
「マスター、起きろ」


五月蠅い。同じ声で言われると朝の苛々が余計に増してくる。
一応時計を確認し、まだ8時だと気付いた時には寝がえりをうった。
日曜日だからあと2時間は寝ていられるのに、インストールした双子はお構いなしだ。


「…五月蠅い、まだ寝かせろ」
「飯冷めるだろ?」
「今日、隣の奴と出掛けるって言ってただろ?」


上からニールの正論、ライルの、今日忘れていた自分の予定を聞き、刹那は慌てて起き上がった。
9時に隣に住む沙慈とその彼女と何故かバーゲンに行く予定だ。
俺は行きたくなどなかったが、昨夜共に夕食を食べた時に何故か決定されていた。


「…忘れてた」
「大丈夫、十分間に合う時間だ。兄さんの飯でも食べてろよ、服は俺が選ぶ」
「ああ…すまない、ライル」


どういたしまして、とライルは感情のない声色で言葉を返した。
双子に感情はないのでおかしな話だが、特に、刹那にはそう感じられた。
ニールが続いて、朝にしては豪華な朝食の並ぶ食卓に座るように促した。
その通りに座り、手を軽く合わせて箸を持つ。


「おはよう、マスター」
「おはよう…」
「毎朝聞くけど、いつになったら俺たちを家事手伝いから本来の歌うソフトに戻してくれるんだ?」


ニールは、笑顔で朝からぐさっと刺さる言葉を吐いた。
ニールの言う通りだ。俺は双子を家事手伝いをしてくれるもの、としか今は扱っていない。
本来彼らは歌うためにあるのに。
俺の言い分としてひとつあるのが、俺は彼らのプログラムされている故郷、アイルランドのことについてまだまだ勉強中である。
彼らの得意な民族調を理解するには相当かかるだろう。我儘かもしれないが、マスターとして彼らの背景などを理解してから歌を教えたいと思っていた。
考えている間にもニールの視線が痛い。


「…また、な」
「けど練習しないと俺ら、音程もリズム感もないままだぜ?せめて調整ぐらいしないとさ」


ライルが選んだ服を持ち、ニールの隣に立った。
そうだったのか。すぐに歌えるものだと思っていた。
ティエリアが直接教えてくれたので彼らの説明書はほとんど読んでいなかった。
なので全く知らなかった。


「…本当か」
「ああ」
「…帰ってきてからやろう」


行儀は悪いが目玉焼きの半熟の部分を突きながら言うと、双子は嬉しそうに(やはり感情はあるのではないか?)笑った。


「やったな、ライル」
「ああ。家事手伝いソフトから脱却だ」
「ライルは何もしてないだろ?」
「マスターのコーディネートしてるし!」
「料理も洗濯も掃除も俺がやってるだろ!」


笑っていたと思ったら、ぎゃあぎゃあと言い争い始めた。
ニールは進んで家事をし出したからてっきり家事が好きだと思っていたが、やはり歌うこと以上のものはないらしい。
バーゲンに付き合ったあと、呼吸の仕方から発声練習の出来る本を探してこなければ。
何だかんだ言って今この時を楽しんでいる自分がいた。


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